10年以上印刷業界の「見える化」の推進に関わってきたが、最近、営業改革のサポートに携わる機会を得た。コロナ禍の大幅な売上減少には「見える化」だけでなく、営業のテコ入れが必須である。サポート活動の中でトライしていることや感じていることを紹介したい。
■商談内容をランクづけ
デジタルシフトで印刷需要が減少するなか創注営業が求められているが、そのためには個々の営業のかなりのレベルアップが必要となる。
お客様から相談される内容に応じて5段階のレベルを設定してみた。
レベル0 印刷物の価格と納期 (もっと安く、早くならないか?)
レベル1 印刷物の仕様 (用紙の銘柄、表面加工など)
レベル2 印刷物の効果 (より訴求するデザインなど)
レベル3 お客様の販促課題(もっと集客するにはどうしたらいい?)
レベル4 お客様の経営課題 (事業承継、人材採用など)
そして、営業日報をデジタル化して、レベルの高い商談には「いいね」を押して共有するようにしている。
営業が意識してお客様の困り事を聞き出せるようになったとしても、そこでも課題に直面する。
例えば最近は採用の悩みを相談されることが多い。企業紹介の動画を作成したり、ホームページの採用情報を充実させたり、大学や高校向けに採用案内をしているが思うように応募数が伸びないというようなものだ。
すでにお客様も何らかの施策は打っているなかで、それを上回る成果が出せるような提案ができるだろうか。いきなり解決策を提示しようとするとハードルが上がりすぎて、次の訪問がしづらくなってしまう。
このときの上長のアドバイスは、他社の取り組み例などを紹介しつつ、まずは聞き役に徹しなさいというものだった。そういうスタンスで何度か通っていると別の印刷の仕事がもらえるようになるという。
どうしたら課題を解決できるかに囚われてしまっていた自分にとっては目から鱗の指摘であった。とはいえ何らかの解決策は持っておきたい。営業個人ですべて対応するのは難しいのでブレインとなるような組織が必要だと感じている。また、こうしたソフトサービス分野においても製造の外注ネットワークのような協力会社のネットワークを構築しておきたい。
■営業会議のあり方
営業会議を生産性の高いものにするにはどうしたらいいか試行錯誤中である。
昨今の状況では、目標数字の未達成が常態化している会社が多いのではないか。すると会議の場で部下は、悪い結果に対しての自分の行動を正当化しようとする発言となりがちで、上司はその言い訳を打ち負かそうとする。会議はこの両者のせめぎ合いに終始し、どちらが勝利するにせよ、掛けた時間とエネルギーの割に得られるものが乏しい。特に発表者と上司以外の出席者にとってはなおさらである。
そこで、営業会議を自分の経験や知識、知恵を提供しつつ、みんなの経験や知識を学ぶという場に変えられないかと考えている。貢献の場であり学習の場でもあるようにしたい。もちろん、数字の結果は結果として受け止める必要があるが、営業会議が結果責任を追及されて申し開きをするだけの場となってしまっては前進がないように思う。
いずれにしても印刷営業という仕事は、より高度化し、よりクリエイティブになっており、仕事のやり方、マネジメントのやり方とも大きく変化していくだろう。
研究調査部 花房 賢