【マスター郡司のキーワード解説2022】メタバース(その参)

掲載日:2022年11月28日

セキュリティが重要に

メタバースについてこれまで解説してきたが、現実よりもメタバースの方が楽しければ、買い物もメタバース空間で済ませてしまうだろう。現物は実世界で配送されて購入者はもちろん使用できるし、そもそも接客がアバター同士なので「実生活では聞けないことまで聞けて、良い」という人も多い。



「対人が苦手な人間もいる」ということは認識しておかねばなるまい。インターネット社会が進むと、このタイプの人間は増えることはあっても、減ることはないだろう。ましてやメタバース空間が楽しければ、現実世界とは関係ないアバターへの服飾品や化粧品の購入、メタバース空間での仮想の土地購入にまで大金を払うようになる(これをアプリ内課金と呼ぶが、日本は課金大国である。実/虚逆転だってあり得る。一種の“霊感商法”か?)。対戦ゲームで強力な武器欲しさにお金を払うだけではなく、メタバース空間も現実世界と等価値になってくるということだ。

そうなると重要になってくるのがセキュリティーで、NFT(Non-Fungible Token:ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン)という技術がにわかに注目されてくる。要するに「自分が購入した品物が本物である」という保証書、つまりNFTとは「世界で一つだけのデジタル資産」という証明だが、急に“ビジネスの臭い”がしてくると思う。

実はメタバースと騒いでいる人たちも、VRSNS派(バーチャルリアリティー好きなSNSヘビーユーザー)とNFT派(お金大好き派だが、新資本主義標榜者も混在)に分かれており、互いに仲が悪い。前者はオタクの夢や趣味(サブカルチャー)を共有することを生きがいにする一派であり、後者はお金儲けをしたい人たちの集まりだ。3番目の勢力として3DCG派もいるが、技術指向なので今後は適当に混ざり合っていくだろう。なお、VRSNS派の中にもFacebookグループがいる。VRSNS派の中でもビジネスパーソンっぽい人たちで、ますます複雑に混在していくことになるであろう。

話は脱線するが、判官贔屓は世界共通で、かつてマイクロソフト(ビル・ゲイツ)が“悪役”だったのが、まさしくコレだ。「なんかクールじゃないよね」とFacebook(ザッカーバーグ)は言われている。つまり、「Facebook(メタ)に買収されたらカッコ悪い」というレッテルを貼られているのだ。あれだけクールだったグーグルも、少しマイクロソフトっぽくなっている気配を感じる(だが、イメージは落ちても偏差値はずば抜けて高く、孤高の星だ!)。アップルはクールというステータスを堅持しており、前号で取り上げたゲーム「フォートナイト」の提供元であるEpic Games社(大化けする?)がアップルの背中を追っている感じである。


NFTとブロックチェーン

さて、NFTの話だ。NFTはブロックチェーン技術が基本となっているので、最初にブロックチェーンのことから説明しておきたい。

ブロックチェーンは取引履歴をブロックと呼ばれる箱に入れて、チェーン(鎖)でつないで保管している。ブロックには前の取引履歴であるハッシュ値を含むし、ネットワーク全体でデータを共有・管理しているので、データを改ざんしようと思っても、ネットワーク上の全てを書き換えることは不可能である。つまり、セキュリティーが非常に高いのだ。昔は特別な大型コンピューターに集中させることでセキュリティーを高めていたが、その逆の発想で、ネットワーク全体に広げて安全を図るという、価値観の大変革が根底にある。

NFTは、このブロックチェーンの基本技術を用いて、世界中のコンピューターに分散させてセキュリティーを管理している。例えばアート作品であったら、最初に作ったデジタルデータだという証明にNFTが使用され、所有者の情報も管理されるようになっている(所有権の譲渡や売買も可)。このNFTによって、コピーフリーであったデジタルデータに一定の足かせが付いたわけだが、コピー禁止になったわけではないので「何が変わったの?」と疑問を持たれる方も多い。だが、ツイッターの創業者であるジャック・ドーシー氏の最初のツイートには三億円の値が付いた(アート作品ならまだしも、たかが数行のテキストだ)。アバターデザインやデジタルアートにも数十億円以上の値が付くようだが、完全にバブルであろう(個人的には、NFTへの過度な期待は疑問)。

なお、NFTで一番大事だと私が思っているのはプログラムが付加できることで、アート作品が売られた場合にはいくら支払うといった仕組みが構築できるということだ。著作権が守られるだけでなく、換金できるようになるということは、コピーフリーのデジタル世界では非常に画期的な出来事である。

(専務理事 郡司 秀明)