新卒・中途の人材投資の動向2022

JAGATでは今秋、印刷会社の経営者、採用責任者を対象に「人材採用の取り組みに関する実態調査」を行い、77社から回答を得た。今回は、新卒、中途人材への投資動向について紹介する。

■印刷業界の人材採用市場の状況
―営業職は新卒、製造は中途で採用強化―

2021年の印刷会社の採用市場を振り返ると、新型コロナウイルスの影響は徐々に緩和し、企業の採用意欲は緩やかな回復傾向にある。

図1：新卒・中途の職種別採用人数の構成比

職種別構成比で見ると、営業職は対前年で新卒は3.5ポイント、中途は1.0ポイントと上昇し、営業人材の強化を志向する企業が多い。また、2022年新卒採用の構成比率が営業39.0％、製造37.6％と調査以来、初めて営業の採用人数が製造を超えた。印刷会社の人員構成は生産部門が半数以上を占め、営業の人員比率は25％前後であることからも、39.0％という数値は、営業職の新卒採用を重視していることを表している。

製造職は対前年で新卒は1.1ポイント、中途は3.2ポイント減少し、昨年に引き続き製造職の採用は抑制傾向にある。なので、より“質”を求めた人材採用が必要ではあるが、厚労省調べによると、2023年高卒採用の求人倍率は31年ぶりに3倍を超え、高校生人材の獲得競争は激化の一途を辿る。それに拍車をかけて若者の工場離れが進み、高校生人材のオペレーター採用は難化している。必然的に製造職の採用は、中途採用が重要な位置づけとなり、経験を有した印刷工場長、機長、オペレーター人材の獲得ができるかが当面の課題となる。

■採用の今後のスタンス
―営業強化、製造効率化、IT・デジタルは未来への投資―

2023年新卒の採用予定数は、前年と比べて「増やす」31％「維持」24％「減らす」20％「採用予定なし」24％と若干だがポジティブな回答が先行している。一方、中途は「増やす」16％「維持」27％「減らす」41％「採用なし」16％とネガティブな回答が多く、新卒採用に力点を置く傾向にある。

図2：人材不足の職種と採用強化を計画する職種

図2は、印刷会社が認識する人材不足と採用強化を職種別に聞いた表である。不足分をすべて充足できるほど資金が潤沢ではない今、人材投資への再配分を検討する必要がある。

営業及び製造職は印刷ビジネスの中心を担う職種であり、40％を超える企業が人材不足だと捉えている。一方、両者の不足と強化のギャップ乖離値は、営業がプラス6.5％に対し、製造はマイナス18.2％である。新サービスの開発や新市場の開拓等、仕事の創注に関わるものは人のアイデアと実行が重要であり、そこはマンパワーをかけてでも創り上げていく意思を感じる。

一方、製造は、既存人材への教育、技術継承、あるいはスキルレスによる作業やワークフローの標準化、IT活用による自動化等、人への依存度を減らし固定費を抑制し効率的な製造体制の再構築が意識されている。人材投資へのスタンスが「営業強化、製造効率化」と鮮明に表れている。

次に、不足（26％）と強化（39％）のギャップ乖離率が最も高かったのが13.0％のIT・デジタル人材である。営業（50.6％）に次いで採用強化を志向している。目先の仕事を遂行する上で同人材層が不足しているわけではないが、将来への投資の意味合いで強化を志向する企業が多い。

今回は、印刷会社の新卒、中途人材への投資動向の一部を紹介した。採用における課題や採用PRの施策の動向については、JAGATinfo2022年12月号でより詳しく紹介する。page2023は創注をテーマに展示会、基調講演、カンファレンス、セミナーを実施していく。創注の源となるのは人材力であり、経営において採用や教育は重要な施策であり、効率的かつ効果的な投資のための参考資料になれば幸いである。

JAGAT　塚本直樹

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