製本とは平面を立体にする技術

掲載日:2015年7月3日

セミナー「現場で活きる 製本の基本・品質知識」では、製本の活きた知識が豊富なサンプルによってわかりやすく語られた。

製本が熱い

製本技術は成熟した技術だから大きな変化はないと思っていた。
JAGATで年に2回開催されるセミナー「現場で活きる 製本の基本・品質知識」では、製本の基礎知識と品質知識を学び、生産性の向上はもとより、良い製品、良い印刷物を提供する知識を習得することができる。成熟した技術だからこそ、ここはきちんと押さえておきたいと思ってセミナーに参加することにした。

講師の北野誠之氏はDNP書籍ファクトリーの品質管理課課長で、製本一筋の技術者だが、まずその製本に対する熱意に圧倒される。受講者全員に配られた分厚いレジメで確認する間もないくらいに、次から次へと製本見本や製品サンプルが回されて、実際に手に触れて確認しながら技術解説などを聞くことができる。
セミナールームの机は講師と受講者全員が一つの島になるようにセッティングされているので、サンプルの手渡しは容易だ。
受講者は社内に製本設備がある会社も、協力会社に依頼している会社もあって、製本に関する知識は一様ではないが、皆熱心に製本見本やサンプルを確認していた。「習うより慣れろ」というけれど、やはり実物を見るのが一番理解がはやいようだ。

印刷技術の変化に対応して変化する製本技術

印刷の標準化と品質管理が高度化する中で、どこで印刷しても同じというようなことが言われることがある。もちろん実際には印刷技術はそんな単純なものではなく、精密機械でもある印刷機を安定して稼働させるために、各社はその技術力を競っている。

製本工程ではちょっとした仕様の違いによって、手作業が必要になる。顧客が必要としているのはどのような形状かをきちんと把握した上で、仕様を決める必要がある。短納期化が進む中で、製本工程における生産性向上は重要だが、必要な養生時間をきちんと確保することが、製本品質に直結する。
北野講師は、上製本と並製本の製品方式の違いや、綴じ方や仕上げの違いを、見本を見せながらわかりやすく説明してくれた。無線綴じとアジロ綴じの違い、その長所と短所もあらためて確認できた。

代表的な製本トラブルにはバラ本、乱丁、落丁、寸法違いなどがある。その原因は明らかで、その対策も考えられているが、完全になくすことはできない。
さらに、最近では付録付き雑誌が定期的に発刊され、その種類や封入物が多様化していることから、製本技術も柔軟な対応が求められている。
北野講師が実際に体験した失敗例と、その後の成功例も惜しみなく披露してくれて、受講者は一つひとつ確認しながら、興味深く耳を傾けていた。

製本だけに絞った3時間のセミナーだったが、受講者は時間が足りないと感じたと思うが、北野講師ももっとたくさんサンプルを見せたいし、まだまだ説明し足りないと感じているようだった。
「製本とは平面を立体にする技術であり、ズレや歪みが生じないように、立体にしたイメージが重要である」という。

(JAGAT CS部 吉村マチ子)

■関連情報 JAGAT通信教育「製本加工の知識と管理」でも製本加工の基礎を学ぶことができます。