受注一品別収支の把握を中心とした「見える化」を推進する活動を10年以上続けてきた。 当初はシステム(MIS)の運用や自社の時間コストの算出といった「やり方」を伝えることが中心であった。
経験を積むにつれ「人」の問題に直面することが増えてきた。
「見える化」の理想的な導入プロセスは、社員と対話を重ね目的(理念)を共有・共感して、社員に自らやる気になってもらうことであるが、現実にはそれだけではうまくいかないことが多い。
というのは、人は頭で理解したとしても、すぐに行動にうつせるわけではない(総論賛成各論反対となりやすい)し、行動が変わったとしてもそれを継続するのは難しい。人間は弱いので簡単に楽な方(いままで通り)に流されてしまいがちだ。
そのため、カリスマ的なトップダウンでないと「見える化」で会社を変えるのは難しいのではないかという話しにもなるが、page2023カンファレンス C1セッション「見える化で加速☆企業変革と働きがい」では、ユニークなアプローチを紹介する。
登壇するのは、鳥取県の綜合印刷出版の田村社長である。自らの取り組みを「イイ人」をやめられない後継者の試行錯誤と振り返るように、社員との共感をベースとした自主性を重んじるマネジメントからスタート。予期せぬ出来事の連続を経てたどり着いたのは、「見える化」をベースとした徹底した標準化(ルール設定)と個人目標管理による客観的な人事評価制度。やる気や頑張りではなく事実と数字で評価。3か月周期での目標設定により、改善と育成(成長)のスピードが格段に早まったという。
以前は、社員のやる気をいかに引き出すかに時間とエネルギーを注いでいて、それが結果的に社員のご機嫌取りのようなことにもなっていたと振り返るが、今は、そうしたストレスはほとんどないという(これは中間管理職のマネジメントでも陥りがちであろう)。
本セッションでは、どのような経緯で今のマネジメントに至ったのか、田村社長の心の内を掘り下げるとともに「見える化」の運用や標準化をベースとした超多能工化の取り組みや社員の成長と企業の成長をリンクさせる人事評価制度を紹介する。
社員や部下が変わらないと悩んでいる方には大きなヒントが得られるように思う。
(研究調査部 花房 賢)