地域文化や自然、歴史、産業、食、アートなど、知られざる地域資源を生かながら、観光による活性化を目指す時、まず初めに取り組む3つのステップがある。
「見て、学ぶ」から「知って、体験・経験、交流する」へ
訪日外客数が2013年、2014年と2年連続で1000万人を突破、日本国内を巡る観光客の構成が変化する中、「観光旅行」の楽しみ方も千差万別になってきている。
従来、旅行者が観光を楽しむ際は、旅行会社によって選択された既に有名な観光名所を周遊する「見て、学ぶ」スタイルの観光旅行が主流だった。しかし、近年は旅行者の顔ぶれ、ニーズの多様化にあわせ、地域文化や歴史、自然、など、これまで注目されていなかった新しい観光資源を知り、付加価値の高い体験・経験型、交流型の観光旅行を楽しむ人が増えている。
旅行提供者の構成も変化
この新しい形の観光旅行は、従来型の観光旅行と比べて高いテーマ性や独自性を持ち、そのプランならではの体験ができると評判が高いようだ。プレイヤーも、旅行会社だけでなく、地域の行政や宿泊事業者、旅行業以外の民間企業、NPO、地域住民団体など様々だ。
第1ステップは「地域資源の発掘」
では、このような高いテーマ性・独自性を持つ「知って、体験・経験、交流する」商品を提供し、観光による地域活性化を目指すとき、何から始めればよいのか。それはやはり、「地域資源の発掘」である。地域のあらゆる情報を収集、文化や歴史、自然、産業、食、名所やアートなど地域資源を掘り起し、地域の魅力を再発見しながら、より多く取り集めることが、第1ステップで重要なことである。
複数のコンテンツを「検証」する
次に、収集した数多くの地域コンテンツを再確認し、「独自性」とともに、地域資源としての「ストーリー」を保持しているコンテンツを選び出していく。ここで重要なのは、選択者の目ではなく、旅行者の目でコンテンツを取捨選択し、発掘した地域資源が、地域を訪れる観光者ニーズに合致するのかどうか、「検証」することである。この際に有効なのは、同様の地域コンテンツを用いて観光活性化を成功させた他地域事例の研究などだろう。
旅行者に響く観光商品を「企画・設計」する
3ステップ目は、検証の結果選択したコンテンツを、旅行者ニーズを満たす観光コンテンツ、商品へと「企画・設計」することである。1つ1つの地域コンテンツにある「独自性」を光らせるよう、それぞれが持つ「ストーリー」を繋げていき、新しい「ストーリー」を創造しながら、旅行者にとってより魅力的な観光商品を企画・設計していく。ただし、提供側だけでは限界があるため、より良い商品を作るには、例えば実証実験やモニターツアーを実施、旅行者の声を聞き、反映する必要がある。実施と再考を繰り返しながら、商品を造成していく過程が不可欠なのだ。
観光活性化を支える立場へ
以上、「地域資源の発掘」、「検証」、「企画・設計」が、観光による地域活性化を試行する際、初めに取り組むべき3つの工程である。この工程において、地域のあらゆる産業を相手に様々な情報を収集、第3者に伝わるよう編集・加工し、印刷物を始めとした各種コンテンツを制作しながら、ネットワークを築いてきた印刷会社には強みがある。地域の観光活性化を支える立場として、活躍できる可能性は多分にあると知っていただきたい。
この3ステップの後に、「情報発信」や「販売」、「運営」という工程が続くが、また別の機会に触れたいと思う。JAGATでは今後も、観光による地域活性化の手法を模索していくだけでなく、成功事例の収集、実ビジネスの検証なども続けていく予定である。
(JAGAT 研究調査部 小林織恵)