選択的情報回避とニュースレターモデル
WebやSNS等の各種メディアにより情報にあふれている時代に、世界中のニュースがいつでもどこでも取れる一方、生活者はいわゆる「見たくないニュース」「知りたくもない情報」に晒される受動喫煙のような状態にあるとも言える。これを理由に特定のニュースを避ける人々は増加傾向にある。
こうした傾向をロイター・ジャーナリズム研究所は「選択的ニュース回避」とし、本来伝えるべきニュースまでもが読者から拒絶されがちであるとの調査結果を発表している。
多くの社会課題に関する真実は受け止めるべきとはいえ、直視し続けることに辟易としてしまうほどの情報が流通している。これに対応して各種情報配信メディアは、特定のキーワードで表示コンテンツをフィルタリング、配信拒否するなど、情報選択の機能を充実させている。
ニュースレターモデルの可能性
情報の受け手側が内容に応じて情報受信を制御する傾向は、各種マーケティング施策にも影響している。プッシュ型の情報配信は届きにくくなっているためか、配信側の告知情報だけでなく、受け手に有益なもの、関心を持ってもらえるようなコンテンツ発信が増加していると実感している方も多いのではないだろうか。
良質なコンテンツを能動的に読んでもらう、いわゆるプル型メディアとして、ニュースレターモデルが注目を集める。
ニュースレターとは、企業・団体などの会員向け情報配信や、個人のファンづくりなど目的に、読み手にとって有益なコンテンツを定期的に届けるメディアだ。現在では作成・配信から課金システムまで備えた配信プラットフォームサービスとして、米国サブスタック社が世界的に成長を遂げている。
ニュースレターは企業のプル型マーケティングの一種として活用される例も多く、メルマガ登録していたつもりのいつものメール配信が、内容面も体裁もニュースレター型に変化していることに気づくこともある。
英国大手新聞社のリーチ社では、デジタルメディア戦略のローカルニュース配信について、Web版ニュースサイトからニュースレター型へと方針転換を図ることを発表した。コミュニティとの関連性あるストーリーに焦点をあてたニュースレター型コンテンツ発信は、ローカルニュースメディアとして親和性が高く、これを「エンゲージメントファーストモデル」として推進していく模様だ。
また、米国などでは個人のコンテンツ発信活動として有料ニュースレター購読者を増やすライターも多く、個人の創作活動、表現活動をもとに収益化を図ることで形成されるクリエイターエコノミーの一種としても広まりを見せる。
メディアを活用した様々なビジネスモデルに展開する方法として、今後も進展が期待される。
(研究調査部 丹羽 朋子)