【マスター郡司のキーワード解説2023】画質(その壱)

掲載日:2023年2月24日

デジカメの進歩が変えたもの

今回もマーケティングから離れて「画質」について語ってみたい。

本題に入る前に、前号で触れた「RGB入稿」に関してなのだが、やはり各メーカーの独自機構というのが関係しているようで、その辺をしっかり把握してからでないと、簡単に「RGB入稿をお勧めします」とは言い切れないことが分かってきた。結果オーライではなく、「何か変?なのは(うまくいかないのは)このような処理をしていたからで、こういう設定にすればうまくいく」と納得のいく解説ができるように準備している。どうもこのようなことになってしまった背景には、画質に対する考え方もあるようだ。

「画質」を説明しだすと“大著”になってしまう。解像度(解像性)、色(色弁別・色調・カラーマッチング)、調子再現等々と、画質といっても人それぞれで、特に昔の印刷人と今の印刷会社のスタッフとでは捉え方が大きく異なっている。昔は銀塩フィルムをスキャニングしてデジタル画像データ化していたのだが、現在はデジタルカメラでダイレクトにデジタル画像化している。誤解を恐れずに言ってしまえば、スキャナー時代は少々大きめのアパチャー(バカ穴)で画素をスキャニングしていたので、必要画素数が「やれ300dpiだ」「350dpiだ」「いや400dpiは必要だ」などのさまざまな“流儀”があった。ワタシテキには解像性に重点を置くと、やはり400dpiが高画質だったと思う(実に印刷人的感覚だ)。

今のデジタルカメラは画素数も上がり、レンズもデジカメ用に開発されているので(ひずみなどはデジタル処理でカバーして、解像性を最重点項目として設計)、解像力は素晴らしい。300dpiで十分だ(350dpiより上は必要ない)と感じている。もちろん350dpiにすれば解像性は確実に良くなるが、必要な画素数という点では300dpiで十分ということだ。

好ましい画質もステップアップ

プリプレスがアナログの時代は、(カメラのレンズ系を通したり、プリンターでの反転工程があったりするため)ハイライトの小点がアナログ工程で飛んでしまうので、撮影も「半絞りアンダーめに」というのが常識であった(シャドウ部も同様につぶれてしまっていた)。今は途中工程でハイライト点が飛ぶなんてことはないので、明るめな仕上がりで全く問題ない。むしろ半絞りオーバーめの方が、クライアント(印刷発注者)には受けが良いだろう。その他、色や(グレー・色)調子など、今言われているカラマネなども昔はカラースキャナーが受け持っていた。

もっともこの時代は、カラーマッチングなどは考えずに、いかに仕事が無事OKになるか(お金をいただけるか)だけを考えていた。肌色再現だって色調が近いというよりも万民受けする肌色、日本人の好きな「湯上がりピンク」を目指していた。空色や海色、その他いわゆる記憶色を意識していたのである。デジカメの品質がイマイチだったころも特に記憶色を意識していたが、目覚ましい品質進化の結果、好ましい画質は1ランクも2ランクもアップし、昔の印刷とは異次元の世界へとステップアップした。分かりやすく言えば、「テレビのような色再現に近くなっていった」と表現しても、差し支えない(?)かもしれない。

デジカメの品質が日進月歩なのは言うまでもないことだが(最近はスマホカメラの進化が特に目立つ!)、これについては次号で詳述したい。今回は、デジカメといってもそのセンサーやアナログ回路には大きな差があるということにだけ触れておく。図1〜3はRAWデータから求めたデジタルカメラの感度特性なのだが(新機種だと問題なので、旧機種に絞って公開)、キヤノン(図1)とニコン(図2)は近しいといえるが、マミヤ(図3)は大きく異なっている。

図1 Canon EOS-1Ds Mark IIIの感度特性
図2 Nikon D3の感度特性
図3 Mamiya ZDの感度特性

今後はCMOSなどのセンサーもある程度似通った傾向になっていくだろうが、差異をデジタル回路などでごまかそうとしたりすると、トラブルに直結したりするわけだ。

(専務理事 郡司 秀明)