12分類の原因から考えるヒューマンエラー対策と改善活動

掲載日:2023年3月15日

ゼロにはできないヒューマンエラー対策

ヒューマンエラー対策への関心度は、印刷業界でも生産性に大きく影響を及ぼす課題である。ヒューマンエラーとは、人的ミス、人的過誤と称され、人間の作業や行動による予期していない事故やトラブルが発生してしまうことだが、どんな会社でも発生し、書類のミスなどの小さいミスから、生命に関わるような重大事故や問題へと発展することもある。ヒューマンエラーはゼロにできないことを前提に対策を講じなければならない。

page2023オンラインセミナー(JAGAT主催)では、「印刷工場のヒューマンエラー対策」についても開催され多くの関心を集めた。講師には、TPS(トヨタ生産方式)で企業の改善活動に多くの実績を持つコンサルソーシング株式会社コンサルタントの石川秀人氏をメイン講師に迎え、ゲスト講師では、オフセットとデジタルのハイブリッドでの生産拠点を管理する株式会社研文社の河田和弘氏(尼崎工場 工場長)とデジタル印刷によるワークフローの工場よりキヤノンメディカルシステムズ株式会社ドキュメンテーション部の澤永裕司氏(印刷製本センター 主幹)を招いた。主な内容は、ヒューマンエラーの原因を12分類し、それぞれの基本的な対応策についての解説であった。印刷工場、オフセット印刷とデジタル印刷のヒューマン対策の事例では、それぞれの管理者より印刷工程特有の事案と対策が紹介された。特に事前対策としてのKYT(危険予知訓練)およびヒヤリハット活動や事後対応(再発防止)での「なぜなぜ分析」「特性要因図」を用いた体系的な取り組みを推進するリーダーシップには効果への裏付けが感じられた。

原因の12分類に起因する潜在原因

独立行政法人労働安全衛生総合研究所の高木元也氏によればヒューマンエラーの原因は下記の12に分けられるという。

(分類1)無知、未経験、不慣れ ➡ 正しい知識、技能を教える

(分類2)危険軽視、慣れ ➡ 安全教育

(分類3)不注意 ➡ 徹底管理

(分類4)連絡不足 ➡ 報連相の活性化

(分類5)集団欠陥 ➡ チームワークの活性化

(分類6)近道・省略行動本能 ➡ KMK活動

(分類7)場面行動本能 ➡ 異常処置マニュアル

(分類8)パニック ➡ 2S

(分類9)錯覚 ➡ 表示・見える化

(分類10)中高年の機能低下 ➡ 環境整備

(分類11)疲労等 ➡ 作業改善

(分類12)単調作業等による意識低下 ➡ 労働衛生

ヒューマンエラーの12分類は、ヒューマンエラーの直接原因だがさらに直接原因を引き起こした原因(潜在原因)が存在する場合がある。

例えば、印刷作業で印刷機の検知器を外してトラブルが発生した場合では、直接原因は「近道・省略行動本能」によることが原因になる場合があり、対処法としてはKMK活動が有効なる。

KMK活動は、

(K)ルールを決める

(M)ルールを守る/守らせる

(K)ルール通りに行っているか観察し、できていなければ改善する

一方で、潜在原因を考える必要がある。例えば、行動に起因する原因で無理な納期や装置の不具合、ムダな作業などの潜在原因があったとすれば工程管理の見直しや設備の保全、作業の標準化などの更なる改善活動への推進にも繋げる必要がある。

ヒューマンエラーは、単なるポカミスでは片づけられない。単純なようだが難しい。何故なら人の特性による原因だからだ。「急がば回れ」である。ともすれば、人を責める対応になることもあるが人を育てる対応が望まれる。社員の納得感や意識を大切にしなければならない。対策は、体系的にしくみ化する必要がある。鍵を握るのは推進するリーダーや各々のリーダーシップである。工場の改善活動にしっかりと取り入れ位置づけし根付かせなければならない。

(CS部 古谷芸文)

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