【マスター郡司のキーワード解説2023】画質(その弐)

掲載日:2023年3月22日

なぜ「知覚的」を選択するべきなのか?

カラーマネージメントでいう「レンダリングインテント」については、本欄でも何度か解説しているが、これはカラースペース間のカラー変換をどのように処理するのかを設定するものである。

最近では知識を得るのに、本よりもウェブからの方が圧倒的に多いと思う。そこで、レンダリングインテントを調べてみると検索結果がたくさん出てくるのだが、その多くが「レンダリングインテントは『相対的』を選ぶべきであり、自分でもテストした結果、その方が『良かった(見た目が明るめならよい)』」などと自慢げに書かれている(カメラマンの投稿が多い)。
Photoshopの「カラー設定」でも、ヨーロッパでは「相対的」がデフォルトになっているが(図1)、日本では「知覚的」である(図2)。アドビの担当者が「日本の印刷物は超一級品だ」ということをよく理解していたので、トーンや色のつながりを最重要と考え、「知覚的」がベストだと結論付けたのだ。

図1 カラー設定(欧州)
図2 カラー設定(日本)

このことは高品質印刷でないと分かり難いのだが、印刷(業界)人は寡黙な方が多いので、意見にはなりにくい。つまり、トーンのつながりの問題は、印刷人が騒がないと全く声にならないのだ。「相対的」だと見た目は明るく仕上がり、私がよく言うように「最近のデジカメは半絞り絞る(昔は調子を飛ばさないようにするため、これを意識していた)のではなく、半絞り明るくしてもよい(私はTV画質と呼んでいるが、これが好まれている)」のである。

トーンのつながり具合はコート紙(以上)に印刷してみれば分かるのだが、今回はどんな風に見えるのか?大きなサイズで印刷してみたい(図3:部分拡大は私の意志が反映してしまうので避ける)。また、今回の画像は製作フローの関係でRGB(JPEG)にしてからの再変換なので、その辺もご考慮いただきたい。アドビのノウハウである黒点補正が掛かると分かりにくくなるが(左端、なしが中央)、JAGATに来ていただければ印刷物をいつでもお見せする。私の授業を受けている写真家志望の学生には、「レンダリングインテントは『知覚的』を使え。そして半絞り分くらいレタッチで明るくすればよい」と断定的に教えている。

図3 レンダリングインテントの差。左から「相対的(黒点補正あり)」「相対的」「知覚的」

(専務理事 郡司 秀明)