JAGAT から発刊された『未来を創る』(原題『THIS POINTFORWARD』)には、ジョー・ウェブ博士が主張している「印刷会社もマーケティング力を付けて、クライアントに対しての総合的サービスを提供できなくてはいけない」という考えが色濃く出ている。
最近は言葉だけではない皮膚感覚のマーケティングとして、女子高生をブレーンにしたり、自由ヶ丘の主婦層をターゲットにしたりする手法が変わり種(実践的な手法)として注目を集め、もてはやされたりしていた。しかしこれらはあくまでマスマーケティングに立脚した手法であり、「未来を創る」の中で言及しているマーケティング力は対象が個なのである。
インターネットはマーケティングにも大きな影響を与え、それ以上に購買行動自体にも大きな革新をもたらしたといえる。私は技術系なので学生時代(高校生の時)は、世の中「モノを作る人とそれを買って使う人がいればよいのではないか?といった、共産主義的な考え方を単純に良し」としていたのだが(思想というより、あくまで単純な思い)、少し経済を勉強し、大人になって世の中のことが分かってくると、営業やマーケティングの重要性も理解するようになった。
ネット社会になると人々の嗜好性は十人十色で多様化の指向が強くなり、100 人いれば100 通り、1 万人いれば1 万のマーケティング方法が必要となってくる。これもインターネットが浸透した結果なのだが、それら多様化した嗜好性に人海戦術が通用するわけもなく、マーケティング要員や作業もIT で対処するしかない。そのようなデジタルマーケティングの必須アイテムをマーケティングオートメーションといっているのだ。
将来は営業活動のためのマーケティングというより、顧客満足度を上げるためのマーケティング、例えばサポートを充実して、営業は二の次といった発想まで現実のごとくいわれている。つまり営業は前面に出さず(営業は要らないといった考え方)、サポート力で販売するという考え方が現実のモノになっているのだ。
マーケティングオートメーションとは、興味・関心や行動が異なる個々の顧客との個別なコミュニケーションを行うデジタルマーケティングにおいて、煩雑業務を自動化するために開発されたツールや仕組みを指している。1 万通りの嗜好に対して担当が一人ついたとしても、個別対応などできるはずもないので、デジタルマーケティングにおいては、自動化のためのマーケティングオートメーションは必須のツールなのだ。
これからのデジタルマーケティングで成果を上げていくためには、顧客一人ひとりに対して、「最適なコンテンツ」を「最適なタイミング」で「最適なチャネル」で提供することが必須なのだ。しかし、顧客一人ひとりに対し、最適なコミュニケーションを素早いサイクルで実行するのは人間の力では不可能で、業務を「シナリオ化」してマーケティングオートメーションで自動化する必要がある。もちろん自動化されるのはシナリオ策定や意思決定の部分ではなく、反復作業の部分であり、自動化によってヒューマンエラーを減らす効果もある。
(JAGAT 専務理事 郡司 秀明)