『印刷白書2015』のための「あゆみ」

掲載日:2015年7月6日

『印刷白書』発刊から22年で変わったこと、変わらないことは何か。編集に取り掛かるこの時期に、過去を振り返ることで、時代と環境を踏まえた白書づくりに生かしたい。

『印刷白書』のあゆみ

印刷業界はバブル崩壊後の1992年に戦後初めてマイナス成長となった。15兆円産業まで成長するとの未来予測は外れた。技術革新による融業化が進み、印刷産業は成熟化していった。多品種小ロット化もこの時代から言われるようになっていた。

JAGATでは、1994年2月に印刷業界初となる白書『印刷白書’93→’94』を発刊した。「変革の推進」をキーワードに、印刷産業の「現状と動向」を「資料に基づいて」、「客観的に分析するとともに、印刷産業にとっての「時代模様/特徴を明らかにする」というコンセプトだった。

『印刷白書’93→’94』の時点で、現在と同じような問題認識がある。プリプレス分野のオープン化が進み、従来とは違うベンダーが違う技術をもって参入してきた。また海外生産へのシフトや雇用調整の動きによって、産業の空洞化の兆候が見え始めた。この頃から「印刷」と「印刷産業」に対する認識の変革が起こり始めていた。

1995~2005年版の印刷白書のキーワードを見てみると
「Look Forward」(95)、「New Stage」(96)、「未来への意志」(97)、「経営の正論」(98)、「自立と自律」(99)、「自己変革」(00)、「決断」(01)、「仮説検証」(02)、「高い志」(03)、「具現化」(04)、「マインド・チェンジ」(05)
とそれぞれの時代に合ったテーマを取り上げている。

『印刷白書』のリニューアル

2006年6月に書籍版にリニューアルした『印刷白書2006』を発行し、会員サービスの一つとして、JAGAT会員企業の代表者に献本することになった。

キーワードは「再評価と再配置」であった。携帯電話が急速に伸び、翌年にはiPhoneがアメリカで発売された。デジタルやIT企業が産業や経済に参入し始め、新たなビジネスの動きが加速していた。デジタルネットワーク社会の到来を実感せざるを得なかった頃である。

2007年6月にJAGAT創立40周年記念の『印刷白書2007』を発行した。過去40年間の“ヒストリーブック”(印刷産業の40年、印刷人材の40年、印刷技術の40年)として編集した。

次の『印刷白書2008』では、広く読者を増やすためにISBNをつけて書店流通しやすくした。続く『印刷白書2009』では、初めて特集ページを設けた。特集のテーマは「地域活性化と印刷産業」で、地域ブランドやグローカルに言及したものとしては、早い時期であったと思う。

『印刷白書』の再リニューアル

2010年9月には、内容・レイアウト・価格ともに一新した『印刷白書2010』を発行した。このときから官公庁などが出す8月末の統計資料まで反映するために発行時期を9月にずらした。もちろん、印刷産業経営力調査、印刷業毎月観測アンケートなど、JAGAT独自の調査データも紹介している。

特集は「世紀の分水嶺~新しい社会の仕組み」とした。塚田益男JAGAT最高顧問は、2000年以降の20世紀と21世紀が混在している状況を「カオス」と呼んだが、その後10年を経過し着実に時代が一つの曲がり角にきたといえる。また多様なメディアによって新たな生活文化を創るコミュニケーション社会が誕生した。もちろんデジタルデバイスがそれを牽引したことは言うまでもない。

その後の特集では、「時代模様/特徴を明らかにする」とともに未来志向型の戦略をテーマに取り上げた。東日本大震災とメディアの関係(2011)やJAGATが公益社団法人に移行したことをうけた「印刷メディアと公益性」(2012)、「デジタルイノベーションと新領域ビジネス」(2013)、「デジタルマーケティングからみたメディアビジネス」(2014)を特集に組んだ。

『印刷白書』の編集準備を開始

今年も『印刷白書』を企画・編集する時期になった。現在発表されている『工業統計 産業編』は、2013年の数字で、全事業所の出荷額は約5.5兆円で、2012年の約5.6兆円と比べると98.7%となった。事業所数は27,026(前年は28,247)、従業員数は306,833人(同312,592人)となった。

最初の『印刷白書’93→’94』では、1992年の出荷額は8.8兆円で、事業所数41,258、従業員数477,391人であった。この22年の変化をしっかり受け止めて、社会や環境がどのように変わったのか、また今後どうなっていくのかを考えていきたい。

『印刷白書2015』は9月末~10月上旬に発行する予定である。JAGATでは今年4月末に『未来を創る―THIS POINT FORWARD』を上梓し、その内容も白書には反映させたいと思っている。『印刷白書』をぜひとも各社の経営戦略にお役立ていただきたい。

(JAGAT 研究調査部 上野寿)

 

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