厚労省主管の助成金制度「人材開発支援助成金」が2023年4月1日に制度改訂した。2022年度の制度と比べて、コースの統合による手続きの簡素化、実質的な助成額のアップ、助成対象者や研修内容の範囲の拡充が図られ、企業が一層活用しやすくなる。
従来は、特定訓練と一般訓練に区分されていたが、2023年度は人材育成支援コースの1コースに統合されている。そのため、対象訓練毎に特定、一般を分けて申請する必要があったが、統合したことで申請を一本化できるため手続きが簡素化している。ただ、今回の改訂で注目するべきポイントはそこではない。実質的な助成額のアップ、助成対象者や研修内容の範囲の拡充が図られ、企業が一層活用しやすくなっている。
<改定前>※2022年度
コース名 | 研修時間 | 経費助成率 | 経費助成 | 賃金助成 | 対象条件 |
特定訓練 | 10時間~ | 45% | 上限15万円 | 760円/1時間 | 多い |
一般訓練 | 20時間~ | 30% | 上限7万円 | 380円/1時間 | 少ない |
<改定後>※2023年度
コース名 | 研修時間 | 経費助成率 | 経費助成 | 賃金助成 | 対象条件 |
人材育成支援 | 10時間~ | 45% | 上限15万円 | 760円/1時間 | 少ない |
制度変更の細かい点は割愛し、実際に利用する上で知っておくべき重要な3つのポイントに焦点を当てて紹介する。
<Point.1>
―研修時間が10時間以上で対象に―
従来の制度では、時間が20時間を超える研修のみが助成金の対象(特定訓練は除く)となっていたため、研修時間の長い講座にしか利用できなく“20時間の壁”が存在した。JAGATの研修でも20時間を超えるものは「工場長養成講座(全6回)」「DM企画制作実践講座(全6回)」「印刷ビジネス開発実践講座(全6回)」と該当するものも少ない。一方、10時間以上であれば、各研修会社が豊富に取り揃えている5時間×2日間のような短期研修も対象になるため、その選択肢は大きく広がり事業者の活用しやすくなっている。
<Point.2>
―経費助成率45%、賃金助成760円と一律に―
今回の制度改定では、助成金額が実質的にアップしているのもポイントである。今までは、一般訓練コースは、経費助成率30%(上限額7万円)賃金助成は1時間当たり380円、特定訓練コースは、経費助成率45%(上限額15万円)賃金助成は1時間当たり760円と、申請するコースに応じて助成金額に差があったが、後者の助成額で一律改定している。経費助成率で見れば15%の差しかないが、上限額が2倍以上に設けられているため実際に受給できる金額は大きくなる。
<Point.3>
―対象研修の幅が広がる―
従来の特定訓練コースは助成額が大きいものの、「労働生産性をテーマとした研修」「35歳未満の若年労働者」「熟練技能育成」に該当する研修に限っていることで、利用しやすいとは言い難い側面があった。しかし、両コースの統合によりその条件が無くなったため、広範囲のテーマの研修で利用できる点は大きい。JAGATの研修でも、「新事業開発」「マーケティング」系の研修は特定訓練コースの助成対象に該当しないケースもあったため、そうした研修も今後は対象になる。
人材開発支援助成金は人材育成をバックアップする定番の制度ではあるが、令和5年度の制度改訂で更に活用しやすくなる。ぜひ、社員のリスキリング、人材育成を検討している企業は活用してみてはどうだろうか。
JAGAT 塚本直樹
<関連講座>
・印刷工場長養成講座
・印刷機長養成講座
・DM企画制作実践講座
・AI・デジタル技術入門講座