EndtoEndのデジタルネットワーク連携を志向するXJDF

掲載日:2023年5月31日

正直に言うとJDFはすでに枯れた技術という認識で、ここ何年も動向をウォッチするのをやめていた。ときおりバージョンアップは行われているもののエンジニアでもない限り仕様を理解する必要はないと思っていた。

展示会でみる自動化のソリューションにはあたり前のようにJDFを利用した機器連係が見られる一方で、かつて期待したほど印刷業界を変えるには至っていない。

とはいえ生産機としてのデジタル印刷機の存在感が増し、労働人口減少への対応が迫られつつある昨今、自動化はより切実なテーマとなりつつある。特にデジタル印刷機で収益を出すためには、受注から面付、出力までのワークフローの効率化が課題となる。この課題に対して、ユーザーとメーカーが一緒になって解決策を考えようという「デジタルプリントJDFコンソーシアム」が佐川印刷(愛媛県松山市)の佐川社長の提唱で立ち上がりJAGATも参加している。2023年の1月に第一回の会合が開かれ、現在まで三回の会を重ねている。議論の内容については別の機会で紹介したいが、参加してみてJDFに携わるメンバーの世代交代があまり進んでいないと感じた。それは、JDFという言葉は知ってるけど中身はよくわからないという人が増えていることの裏返しであろうし、ワークフローを考えるうえではユーザであっても多少は仕様を理解しているほうがよいと思い改めてJDFの仕様を解説する研究会セミナーを企画した。

準備を進めるなかで最近の規格動向について資料を読んでみると、今後の印刷業界のあり方を強く示唆していることに驚きをうけた。JDFの後継規格としてのXJDFの存在は知っていたものの、以前のXJDFのねらいについての理解は次のようなものであった。JDFはメーカー固有の独自タグの設定を許容しており、標準といえども個別対応の要素が強くなってきたので、その課題の解消すること。JDFのXMLは世の中の標準的なXMLと比べて癖が強いので汎用性を高めること。そして、JDFは巨大で冗長なので、それをシンプルにすることである。

しかし、XJDFに関するホワイトペーパーを読むとJDFとXJDFでは、そもそものねらいが異なることがわかる。

JDF : 作業指示書を電子化する(工場内での流通を前提)
XJDF : 業界を超えたサプライチェーンを電子化する
(他業界とのデータ交換を前提。印刷物の製造工程はサプライチェーンの一部)

本記事のタイトルのEndtoEndとはサプライチェーン全体という意味である。ここにはインダストリー4.0の思想が反映されている。また、顧客からの品質要求とそれに対しての結果(生産した印刷物が品質要求に合致しているかどうか)をデータ交換する枠組みも規定されている。もう一点興味深いのは、PDF/X-6にはXJDFを直接書き込めるようになっており、それはISO 21812ですでに規格化されている。デジタル印刷のワークフローを大きく変える可能性を感じる。

6月6日の研究会セミナーでは、JDFの仕様解説(XJDFはさわりだけ)と、JDFの提唱企業の一社でもあるハイデルベルグからJDFの仕様や思想がプリネクトを始めとする同社のワークフロー製品にどう反映されているのか、反映されようとしているのかを紹介するとともに、JDF/XJDFの動向から見える今後の印刷業界の目指すべき姿について議論する。

【6/6開催】JDF仕様解説とワークフロー

(研究調査部 花房 賢)