JAGAT会員を対象にした「印刷産業経営力調査」の2014年度の調査結果がまとまった。JAGAT info7月号の特集では、業績分析編として速報している。売り上げは2年連続の増加となったが、物価高や円安、消費増税などの影響したのか、経常利益率は2%台を維持しているもの前年比では減少した。全般には人材と設備投資に動きが出ており、印刷会社が新たな成長を模索し始めた兆候が見られると報告している。
印刷会社が新たな成長分野をいかに見つけていくかということに対して、JAGATではこの4月に、『未来を創る-THIS POINT FORWARD-』(著:ジョー・W・ウェブ博士 リチャード・M・ロマノ)を出版し、これからの印刷会社が採るべき方向性について具体的に幾つかの提案を行っている。その方向性を実現する上で注目すべき技術としてマーケティングオートメーションについて言及している。このマーケティングオートメーションを提供する代表的なもの一つにマルケトがある。J AGATでは5月28日に『未来を創る-THIS POINT FORWARD-』発刊記念セミナーを開催し、株式会社マルケト代表取締役社長の福田康隆氏に講演いただいた。
今、なぜマーケティングオートメーションが注目を集め、この分野が急成長しているのか。その理由の一つに、ネットを基盤とするデジタルメディアが普及し、広告や情報が氾濫している中で、企業がターゲット顧客に対して確実にそのメッセージを届けることが難しくなっていることがあるからだという。したがって、顧客が必要とする情報を確実に届けるためには顧客と長期にわたる関係を構築していくこと、エンゲージメントマーケティングが重要になる。エンゲージメントマーケティングを実践していく上で、さまざまなノウハウが必要となるが、それを実践できるようにするツールがマーケティングオートメーションなのである。
ところで、これらの主役はデジタルメディアであるのは確かで、印刷業には一見関係ないように思える。実際、従来通りに単に印刷物の製作だけを中心にビジネスを展開するのであれば関係ないかもしれない。しかし、印刷物の市場が縮小している中で、減少する分を補てんする新しいことで売り上げを確保していく必要がある。その時、特に販売促進の支援ビジネスを行ってきたところなら、マーケティングオートメーションは一考に値する価値がある。
マーケティングオートメーションの実践となると、紙メディアならダイレクトメール(DM)になるだろうが、例えばOne to oneのDMである。ターゲット顧客に対して、顧客の嗜好や行動を分析し、そのデータに基づき必要な情報を個別に印刷するにはデジタル印刷機のバリアブル印刷機能が不可欠になる。そして、DMとデジタルメディアを連携してレスポンス率を測り、効果測定につなげる。これを繰りかえしながらデータを蓄積して、より効果的なマーケティングを仕掛けていく。この一連の作業工程でマーケティングオートメーションが活用できるのではないだろうか。実際に紙によるマーケティングオートメーションを確立したいと意欲的に取り組む印刷会社も出てきている。『未来を創る』では、「マーケティングオートメーションが扱うデータは、バリアブル印刷と同じ目的に貢献する。適切なタイミングで、適切な人々に、適切なメッセージを届けるのである」と指摘している。
『JAGAT info』7月号では、福田氏の講演概要から、マーケティングオートメーションは何を目的に、いったい何ができるのかを解説している。さらに、福田氏、日本フォーム印刷工業連合会専務理事山口実氏、JAGAT専務理事郡司秀明の3人でディスカッション行い、印刷会社がマーケティングにどのように取り組むべきか、どのような武器を持つべきかなどについて議論された。この概要も紹介する。
このほか経営者インタビューは販促支援企業として、バリアブル印刷によるDMから映像制作までメディアミックスで売れる仕組みのお手伝いをするという小松総合印刷の小松肇彦氏にお話を伺った。
(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)
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