新入社員が入社してもうすぐ半年、いよいよこれから活躍の本番が始まろうとしている。
「新入社員意識調査」から彼らの横顔に触れてみたい。
公益財団法人「日本生産性本部」では、毎年新入社員のタイプを物に例えて発表しているが、今年度の新人は「消せるボールペン型」。「見かけはありきたりなボールペンだが、書き直しができ、変化に対応できる柔軟性を持つ」のが特徴だという。
JAGATでは、印刷会社の新入社員を対象に、印刷業界へのイメージや働き方を問う「新入社員意識調査」を実施している。集計結果は『JAGATinfo』に後日掲載予定だが、その一部をお伝えする。
■半数近くが印刷業を第1志望に
「印刷業は何番目の志望だったか」を問う設問では、「第1志望」が昨年はじめて1位から2位に転じたが、今年再び首位に返り咲いた。全体の47.4%とほぼ半数近くが印刷会社を志望して入社してきている。
第1志望に選んだ人たちの選択理由として、「ものづくりをしたい」「様々な業界・領域に関われるから」といった回答が目についた。「印刷業界へのイメージ」を尋ねる設問の回答にも重なるが、「印刷」の仕事に対して、「製造業」と「情報処理業」、それぞれの魅力を多面的に感じているようだ。
「今の会社に入社を決める上で重視したこと」を尋ねる設問では、例年同様、「仕事内容」「親・知人のすすめ」が首位に並んだが、昨年は6位だった「能力を活かせる」が、ここ数年上位を占めていた「安定性」「会社に活気がある」「福利厚生」などを抜いて3位となり、順位を上げた。会社の雰囲気や条件よりも、自分が属する会社をより現実的な側面から判断し、そこでの働き方がある程度具体的にイメージできるかどうかが入社を決めるポイントになっているように思われる。
■入社後伸ばしたいスキルは「コミュニケーション力」と「語学力」
「入社後もっとも伸ばしたいと思うスキル」をひとつだけ選ぶ設問に対しては、昨年同様「コミュニケーション能力」が最多となり、続いて「技術」が2位だった。また、「語学力」が昨年より10ポイント以上増え、「企画力・発想力」や「リーダーシップ」を抑えて3位と大幅にＵＰした。語学力への関心の高まりは、グローバル化時代への意識づけとともに、急速な環境変化を伴う将来を見すえて、着実に使えるスキルの習得を目指そうとする向上心のあらわれか。
一方、「今の会社にアピールできること」を尋ねる設問では、、昨年まで5年連続1位を占めていた「やる気・意欲」が4位に下がり、「協調性」が首位に浮上、「社交性」「体力」がほぼ同率で続いた。この結果を積極性がやや後退したと受け取るべきか、がむしゃらに前に出るよりも、組織に溶け込み和の中で柔軟に対応していける力を強みと考えるべきか、どちらだろうか。
冒頭で紹介した今年の新入社員のタイプである「消せるボールペン」のもうひとつの特徴は、「指導に力を入れすぎると色（個性）を失う」ことでもあるらしい。消せるボールペンは摩擦熱による高温で文字が消える機能をもつ。また、使い勝手の良さから酷使するとインクが切れてしまう（離職する）危険性をはらんでいるので、注意が必要との指摘もある。彼らの資質を見定め、個性に合った教育が与えられれば、長所を最大限に伸ばしていくことも可能だろう。
コミュニケーションや人間関係を大事にしつつ、能力を高めたいという意思をもって入ってきた今年の新入社員たち。受け入れる側が、自らを向上させたいという新入社員ひとりひとりの意識に寄り添い、変化に強い対応力と柔軟性をどう育て、活用していくかによって、早期の戦力化のみならず、今後の定着にもつながっていくのではないだろうか。
（CS部 教育開発グループ 原淳子）
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