2015年3月期決算の上場印刷企業21社の業績は、全体的に見ると売上高が前期に比べて微増となったが、営業利益、経常利益、当期純利益は大きく伸びている。しかし、個別に見ると増収増益が6社、減収増益が5社、増収減益が4社、減収減益が5社と半数弱が減益(営業利益ベース)となって、明暗を分けた形になっている。
一部の企業を除くと各社とも印刷分野は全般的に苦しい状況が続いており、特に出版印刷を手掛けるほとんどの会社で、この分野は減少しており、出版市場の不振がそのまま各社の売り上げに影響を与えているものと推測できる。
注目されるのは、売り上げが前期比で7.1%、営業利益が前期比352.3%と大幅増となった日本写真印刷だが、これはディバイス、産業資材が好調なことが要因であり、印刷物などの情報コミュニケーション分野は減収となり、この分野に限れば苦戦しているといえる。
増収や増益を果たした企業の要因として特別に共通の傾向があるとは断言できないが、BPOなど印刷付帯分野の取り込み、ICTの活用やICT事業分野への進出、得意とする市場分野を持ったところが比較的好調のように見える。JAGAT info8月号では、2014年3月期決算の上場印刷企業21社の業績をまとめているので、ぜひご覧いただきたい。
また、「デジタル印刷最前線」では小松総合印刷の取り組みを紹介する。同社は圧着DMや、スクラッチ印刷を活用してのスクラッチカード、三角くじ、圧着くじなどのほか、組立式卓上カレンダーDM、返信はがき付うちわメールといった販促支援ツールなどを得意としている。
同社の商品が特徴的なのはUV枚葉印刷機にKodak ProserS5を搭載してバリアブルで印字を行って、レスポンス率を上げるような工夫を行っていることだ。バリアブルでの印字は月に100万件以上を行っており、既に同社の全印刷物の1/3は、なんらかのバリアブル印刷物となっている。また、同社では新たにマーケティングオートメーションに取り組んでおり、今後は〝紙のマーケティングオートメーション”を実現しようと、カラーバリアブル、イメージバリアブルにも力を入れて商品開発を行っていく予定だ。
そのほか、経営者インタビューは上武印刷の大谷勇二氏に、同族会社ではない同社の経営姿勢や後継のあり方などについてのお話をうかがった。
(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)
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