石版印刷とはどんなものですか。

掲載日:2014年8月17日

※本記事の内容は掲載当時のものです。

ナンデモQ&A:その他

Q:石版印刷とはどんなものですか。

A:石版印刷は現代の平版印刷の源となる印刷方法です。この印刷には石灰石が用いられ、ドイツのバイエルン地方で採れる天然のものが使用されます。
 石版印刷は、セネフェルダーが石灰石の面に楽譜を凹刻する研究をしていたときに、偶然、この石が多孔性で水分を長く保持できることを知り、その基礎をつくりました。
 これは、水が浸透しやすい状態に石灰石の表面を平らに仕上げます。この平らな表面に、直接、専用の油性のクレオンで描画していきます。この時の、筆圧の強弱で濃淡が決まります。また、転写紙に型あげしてこれを石版石に転写する方法もあります。
 このあとに、クレオンが擦れて取れないように、タルクという粉を塗ります。そして、アラビアゴムと硝酸を混ぜた液体を塗布することにより、クレオンの油分が石灰石のカルシウム分と化学反応して描画部分が水を弾く状態になります。
 そして、再び水洗いしたあと、アラビアゴムのみを塗布して非画線部を保護し、チンクター(アスファルトのようなもの)でクレオンの余分なスミの色素を拭きとって画線部を形成させます。これで版が完成です。
 この版に真水をつけてウェットな状態にしてから、インキローラーでインキをつけます。 (現代の平版印刷では、エッチ液やIPAといった薬品を混合させますが、石版石は薬品をつけるとうまく印刷できませんので真水を使用します。)
 ある程度インキの盛り厚がつくまでこの作業を何回か繰り返します。そして、用紙を直接、石版石にあてて印刷します。版には水が湿らせてあるため用紙にももちろん影響があります。この場合の用紙は、石版専用用紙で組織均等、表面平滑、しなやかで弾力性があり湿りによる伸縮が小さいという特長をもったものを使用します。
 石版石は、とても柔らかく、研磨すると粒のそろった砂目がたち、クレヨンで描画したものがととても柔らかい感じが表現され、特にスミ1色のものに向いています。
 しかし、この石版石は10kg以上もあり非常に扱いにくいという難点もあります。そこで登場したのが、亜鉛版です。亜鉛版に砂目立て処理を施し、石版石と同様の工程で作業します。
 石版石での印刷をLithographyといい、亜鉛版での印刷をZincgraphyともいいます。

 

(2002年4月8日)

(印刷情報サイトPrint-betterより転載)