※本記事の内容は掲載当時のものです。
ユーザレポート:XMLドキュメント入力編集システム「ウェルDOC-WX」
XML入力ビジネスとの出合い
1999年12月,あるXMLビジネスが全国で注目を集めた。それは大蔵省印刷局(当時)による「官報のXML化プロジェクト」である。これは約90万ページの官報の印刷物(1947年以降)を,28ブロックに分割してXML化する大規模プロジェクトで,うち3ブロックを当社は落札した。しかしこの案件は激烈な価格競争の中で入札され,XMLという付加価値の高い作業ながら,「いかに安くできるか!」が大きなテーマとなった。そのため当時はまだ少なかったXML技術者が直接作業に対応することは考えられず,一般入力スタッフがXML技術の理解なしでも,取り組むことのできる仕組み作りが早急に求められた。
では,この「安く・早く・正確で大量な処理」をこなすにはどうすればよいのだろう。そこで注目したのがMicrosoft Wordである。当社は過去十数年にわたって在宅スタッフを活用した入力ビジネスを手掛けてきた。このスタッフの中でXMLを理解していた人は皆無だったが,Microsoft Wordを扱うメンバーはかなりそろっていた。そこで当社では,入力ルールの整備による「Microsoft Wordの活用+XML変換プログラム」により,Microsoft Wordのレイアウト済みファイルから,自動的にXMLデータが取り出せるシステムを社内で構築することとした。結果,入力段階ではXMLを意識せず,Microsoft Wordテンプレートで入力編集し、最終段階でXML出力するXML入力編集システムを独自に開発,ほかの業者が納期対応に苦心する中,99.95%の文字精度のハードルもクリアし,2000年6月の納期に対応することができた。実はこのプロジェクトにおける技術・ノウハウが,「ウェルDOC-WX」の源泉である。
ウェルDOC-WXとは
ウェルDOC-WXとは,Microsoft Wordをバッチ処理によるドキュメント編集・整形システムに変身させるアドインソフトである。例えば,基本パターンが定まった大量ページの報告書をページアップする場合,ページごとに手作業編集をしていては手間・時間が課題となり,分散入力をする際もスタイル・項番・全角半角の不統一が発生する。こんな大量ドキュメント編集の課題を自動編集によって解決すること,これがウェルDOC-WXである 。
主な機能は次の3点である。
〔1〕Text⇒Microsoft Word自動変換機能
Text内の章・節・項などの項番・項目,表・図のタイトル,項番配下の段落などと,Microsoft Wordテンプレートのスタイルの変換対応を,変換フィルタ画面で設定するのみで,レイアウト整形されたファイルが自動出力できる(Text内の表は,タグで囲まれたタブ文字区切りの文字列を表へ変換)。
〔2〕Microsoft Word整形支援機能
全角・半角文字,組文字,タブとスペース送り,漢数字→半角数字など,分散入力や年度別に作成され,その入力ルールがバラバラのMicrosoft Wordファイルのルール統一(正規化)を行い,ファイル統合ができる。
〔3〕XML⇔Microsoft Word自動変換機能
XML変換フィルタにおいて,任意のスキーマ(XML)とテンプレート上のスタイル(Microsoft Word)の変換対応をひも付けし,双方向での変換を実現している(現バージョンではスキーマを一部に限定)。
ウェルDOC-WXのターゲットとは
文書構造が明確で,ルールが定まった次のような大量ドキュメントがターゲットである。
〔1〕自治体:条例・例規,議会会議録,計画・報告書
〔2〕金融機関:事務取扱規程集などのマニュアル
〔3〕各種マニュアル:メーカー系~ISOマニュアル
従来のバッチ組版とは,大量ページ,しかも大量部数のものが中心であった。つまり印刷コストの中で,バッチプログラムコストを吸収することも可能であったが,ターゲットドキュメントの現状は,オンデマンド化へ流れ,大量ページ・少部数対応の方向が進む中,一層のコストダウンが求められる。そこで,Microsoft Wordレベルのスキルと変換・整形ルールを定めるだけのウェルDOC-WXでの対応は,大幅コストダウンにつながっている。
またXML入力変換システムとしては,XML専用エディタが主流の中で,クライアントの一般オフィスにも導入可能な手軽さによって,XMLドキュメントの増加に寄与するシステムと考えられる。
「XMLとは敷居の高いテーマ」「普段の文書作成からXMLへそのままつなげたい」。クライアントは皆,このような考えをもっている。ドキュメントデータベースによる文書の利活用,スタイルシートとの連動によるWeb配信など,XML化の入口がMicrosoft Wordというのは,クライアントも理解しやすく,クライアントとともにウェルDOC-WXを運用するというドキュメント連携により,XMLドキュメントの普及促進ビジネスを目指していくものでもある。
こんな大量ドキュメントの入力編集の現場をもった当社の実務現場から生まれたウェルDOC-WXは,印刷会社の皆様に,組版の効率化からXMLドキュメントビジネスへの進出に役立てていただきたいと考え,一般システム販売にも対応している。そしてクライアントのドキュメント分析から,XMLドキュメントを活用した業務フロー設計,ドキュメントマネジメントシステムの構築など,印刷会社の皆様,そして皆様のクライアントを,実務現場のノウハウからご支援していくことを当社では目指している。
■関連情報
総合オフィスサポート株式会社
『プリンターズサークル』2004年2月号より
(2004年3月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)