※本記事の内容は掲載当時のものです。
ユーザレポート:技術系と販促系情報を統合するメディア型のもう一つの基幹システムを生み出す
三菱電機名古屋製作所は,「MELSEC(メルセック)」ブランドで知られるシーケンサを始め,FA機器製品のトップメーカーである。同社は顧客関係性の強化を基軸とする「MTC 総合情報サービス」プロジェクトの中で,データベース・パブリッシング・ソリューション「DBDBシステム」を導入した。なぜ印刷・組版工程にまで及ぶデータベース化が必要なのか,その推進責任者であるFAシステム部メルセックテクニカルセンター長飯田裕一氏に聞いてみた。
「シーケンサとは,工場の自動化ライン構築に使われるコントローラで,当社のアイテム数は生産終了品も含めると3000機種以上,国内では50%を越えるトップシェアを獲得している。そして管理される情報量は3000機種×(印刷物やWebなどの媒体数)でそのメディア制作には莫(ばく)大なコストと手間が掛かる。シーケンサは,顧客の用途に応じて複数の製品を組み合わせられ,製品寿命は10~20 年の長期にわたる物である。つまり,多種多様な仕様が実在し,生産中止後でも故障やシステム変更の問い合わせに迅速に対応する必要がある。製品情報を一元的に管理し,必要情報を瞬時に検索でき,印刷メディア制作にもマルチに活用できるワンソース化=DBシステムが求められていた。業界トップの当社が着手しなければ何も始まらないとの思いから,実行に移す決定をしました」(飯田氏)。
基幹系データ,各部門に個別に構築されたレガシーな情報管理システム,製品規格書・設計書・製品仕様書・図面,新製品情報やテレフォンセンター向け資料とQ&A情報,海外規格取得情報,Web公開やCALS情報に至るまで統合するタフな編集工学的アプローチによってワンソース化するのである。まさに技術系情報と販促系情報を統合するもう一つの基幹システムの構築である。
「技術情報を整理,管理,発信するために何から何までやるのがわれわれの部門。カタログや製品仕様書,技術資料ができて当たり前という評価。今回のDB化への挑戦は何よりも,業務の価値そのものを引き上げたい。その意識革命をやり切るんだという思いがわれわれのエネルギー源だったといえます」(飯田氏)。
このプロジェクトを全面バックアップしたのは三菱電機インフォメーションシステム事業本部技術企画部121ビジネス推進センターである。同推進センター長の西館博章氏は次のように語る。 「名古屋製作所の挑戦は,業界トップメーカーとしてのプライドでもある。成功すれば業態を問わず,グループ内外の事業体,部門は動機付く。支援システムを作るべきだ。問題解決へのソリューションについてSIチームと議論し,業務主体の責任体制の明確化がシステムの基本コンセプトになると考えた。製品データベース化はわれわれの本分である。これとシームレスに連携できて,メディア制作工程では手作業を一切入れない自動レイアウトや自動組版の可能性を調査した。組版系のシステムではRDB連携を機能的標準とし,カスタマイズ性にも優れていたシンプルプロダクツのWAVEに白羽の矢が立った。三菱電機として構想していたワンtoワン・オンデマンドカタログ制作を実現する上で,『DBDBシステム』の開発着手はこの自動組版エンジン実装でリアリティをもちました」(西館氏)。
顧客関係性強化のためのオン・デマンド化へ
「DBDBシステム」導入の成功
「MTC 総合情報サービス」は「DBDBシステム」を導入して,いよいよ活性化した。
「私どものお客様は,単純に価格だけの比較で製品の購入を決定することはできない。性能や拡張性など,さまざまな項目を他社製品と比べていただく必要もあり,お客様ごとの実情を一番よく知っている販売店や代理店が,データベースからそのお客様にとって訴求性の高い情報を引き出し,競合との比較表などを手軽に作ってご提案できれば,セールスの効果を大幅に高められる。『MTC 総合情報サービス』の中で,製品スペック・データベースと自動組版システムがシームレスに連携し,必要に応じて最適な印刷物を個別に提供できるシステムには,大いなる可能性がある。DBDBシステムの製品スペックDBには,印刷物誌面レイアウトの意思決定を行える機能が組み込まれた。 機能特長,スペック・性能仕様などのデータをフォーマットに従って入力すれば,印刷用の自動レイアウト工程に直接連携できる。媒体制作データとして印刷会社に設置されたWAVEシステムに自動的に送信され,校正リスクも最小化した。 WAVEは校正時に修正された赤字を自動的にデータベースへフィードバックする機能を実現しているので,細部にわたるデータチェックが及ばないでいる製品情報があったとしても,最後には印刷工程で正規化された情報を反映してデータ価値を高める。一元的管理が保証できるのは大きなメリットとなっている。入稿原稿の作成などの作業を簡便化できたこと,製品情報を一元的にまとめたデータベース上で修正指示を更新できるようになったこと,印刷工程での工数をムダにせずフィードバックできること,この土台はお客様に対して,要望される情報を,従来よりもスピーディかつ正確にお届けできる環境が整えられたことを意味する。今後は,ワンソースをマルチユースし,電話やファックスによる問い合わせ対応,Webやiモード,CD-ROMへのメディア展開なども日程化している」(飯田氏)。
■関連情報
株式会社シンプルプロダクツ
三菱電機株式会社
『プリンターズサークル』2003年4月号より
(2003年5月)
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)