日本語組版とつきあう その49
組版作業では校正は欠かせない
組版作業において校正は欠かすことができない作業である。そもそも完全原稿を作成するのは一般に困難であり(最近は“完全原稿”という用語もあまり見掛けない)、また、組版処理で問題が出るかもしれない。
なお、JIS Z 8125(印刷用語―デジタル印刷)では、“完全原稿”を次のように定義している。
“印刷工程にまわす原稿の内容及び組版指定に誤りがなく、すぐに組版又は製版の作業ができる状態にある原稿。”
校正という作業が必要になる原因としては、主に次のような事項があげられる。
1)原稿の不備
2)原稿整理・原稿指定の不備
3)組版作業の不備
さらに、著者(原稿作成担当者)による著者校正で、後から訂正が入る場合もある。
校正で用いる校正記号
校正は、組版の結果を紙にプリントアウトした校正刷で行う場合が多い。ここで用いる校正記号として、日本工業規格のJIS Z 8208(印刷校正記号)が制定されている。
JIS Z 8208は、1965年に制定されたものであるが、2007年に改正された。2007年の改正では、記号の種類も多くなり、ルビに対する訂正記号、書式の変更を指示する記号などが追加され、また、修正の指示および組版指定に用いる併用記号も規定されている。記号と記入例では、縦組および横組の両方が示されている。さらに“使い方”と“許容できる使い方”の説明がついている。
改正されたJIS Z 8208は、校正関係の書籍等で参照されており、一般にも普及しているので、実際の校正作業では、ここで規定されている記号を用いるとよい。
いずれにしても、校正記号は校正担当者の意思を正しく組版作業者に伝えるためのものであり、誤解を与えないように、また、誰がみてもよくわかるように、記号の形式、使い方にも注意して記入するのが望ましい。
わかりやすい校正記号
例えば、JIS Z 8208では、図1に示すように、誤字の訂正方法として対象の文字・記号に斜線を引き、そこから引出し線を引く方式を示している(斜線を用いない方式も許容されている)。斜線を引くことで、訂正の文字・記号やその範囲が明確になる。
また、文字の挿入では、図2に示すように挿入箇所に楔形の記号をつけ、引出し線を引き、挿入する文字・記号を二股の線で囲む方法を示している(楔形の記号を省略する方法も許容されている)。挿入する文字・記号を二股の線で囲むことにより、文字・記号の訂正ではなく、挿入であることが示され、さらに楔形の記号をつけることで、挿入箇所が明確になる。
なお、二股の線で挿入文字を囲む場合、まず挿入箇所から引き出し線を引き、例えば横組のときは、その線の下に挿入文字を書き、最後にその挿入する文字を囲むように下の線を書くとよい。
(図1)
(図2)
引出し線の書き方
英米では、引出し線を用いない方法で指示している。この方法では、行中で訂正する箇所に記号をつけ、引出し線を引かないで、訂正する行の左または右に訂正内容を書いている。同一行に複数の訂正箇所があった場合、左右に書く順番と各訂正内容を区切る線により、どの訂正箇所をどのように直すかが分かるようになっている。
これに対し、わが国では、訂正箇所と訂正内容は引出し線でつないで指示する方法をとっている。JIS Z 8208でも、その方法を規定している。
訂正する内容は、訂正する箇所の近くの余白または行間に書き、引出し線で結ぶようにする。一般に縦組では引出し線は右上、横組では行の上方向の左または右に出す。縦組では、一番最後の行では左側に引いたり、行の下の方では右上に余白がなければ下の余白に引き出すこともある。
なお、引出し線同士は交差しないように、あまり長くならないようにする(あまりにも長いと修正作業を担当する人が眼で長く追わないといけない)。慣れないと、引出し線を誤字の直前・直後の関係のない文字にかけてしまうが、訂正する印刷文字があいまいになるので、注意する。
縦組では、たとえば書き込みの訂正文字はなるべく印刷面を避けて、近くの余白や2, 3行前の行間に書き入れるとわかりやすい。横組では行間にそって左右の余白に引出し線を引き、その先に訂正内容を示すとよい。
JIS Z 8208には、縦組と横組について、校正刷への校正記号の記入例とその修正結果が参考として示されているので、参照するとよい。
なお、規格票(JISとして発行された文書)は、一般財団法人 日本規格協会から出版されているので、同協会から入手できる。また、日本工業調査会のWebページで検索して閲覧できる。