日本印刷産業連合会はデジタル印刷について毎年調査、2015 年3月の報告書は143 社(回答率25%)からの回答をもとに作成されている。27 ページに及ぶ報告書であるが、本稿では特に本調査ならではの設問についての考察を通して、デジタル印刷の事業性に迫ってみたい。
有版印刷の売上高構成比
1 位:前工程 17%
2 位:印刷工程 61%
3 位:後加工 22%
やはり印刷会社にとっては印刷工程が売上高の約6 割を占め、前後工程でも各2 割ずつを構成していることが分かる(本調査は有版印刷についても調べている)。
デジタル印刷機の稼働日数
1 位:5 日 50%
2 位:3 日 36%
3 位:1 日 14%
週5 日フル稼働しているデジタル印刷機は50%しかなく、オフセット機と比べて低い。納期が数日に集中しやすい品目を受注している結果だと指摘している。
デジタル印刷機の収益状況
1 位:儲かる 42%
2 位:儲からない 21%
3 位:±0 37%
本来、儲かるか否かは機械が決めるのではないが、儲かると回答した企業が意外に多いように思わ我が国印刷会社におけるデジタル印刷の活用状況データから見るビジネスモデルの実態れ、デジタル機の実用化・事業化 が進んでいるようだ。
売上高が最大のデジタル印刷ビジネスモデル
1 位:ワンストップ 21%
1 位:通常の訪問営業 21%
3 位:W2P(BtoB、BtoC) 19%
4 位:バリアブル印刷 16%
5 位:ハイブリッド 7%
5 位:在庫レス 7%
5 位:付加価値後加工 7%
ワンストップと訪問営業を合わせた従来モデルが4 割、デジタル機ならではのモデルが6 割。W2Pと在庫レスを合わせて見ると合計は26%と最多回答になる。デジタル印刷の無在庫性が顧客の財務内容を改善する効果は、デジタル機の優位性として活用されている。
顧客への提案コンセプト
1 位:コストダウン提案 68%
2 位:売り上げ/ マーケティング提案 32%
デジタル印刷機はコストダウン志向で使われることが多い。しかし、真にデジタル印刷の需要を創造するには、売り上げ/マーケティングに役立つ提案を増やしていく必要があるだろう。
提案コンセプト〔売上/マーケティング提案〕
1 位:売り上げUP 提案 12%
1 位:集客UP 提案 12%
3 位:プロモーション提案 7%
多くの場合、売り上げUP は集客UP が前提なので、両者の厳密な切り分けは難しいと思われ、合わせて見ると合計24%と、売り上げUP が実質的に全体の1/4 を占める。
提案コンセプト〔コストダウン提案〕
1 位:オンデマンド納品提案 21%
2 位:低価格提案 16%
2 位:在庫レス提案 16%
2 位:ワンストップ提案 16%
オンデマンド納品と在庫レスは本質的に似ていると思われ、合わせると全体の1/3 を超えて最多回答になる。低価格提案は16%あるが、費用対効果を踏まえての低価格なのかどうか、設問はそこまで問うことはしていないので、ここでの評価は控えたい。
売上高が1 位のデジタル印刷生産品目
1 位:商業印刷
2 位:事務用印刷
3 位:データプリント
4 位:ブックオンデマンド
4 位:シール・ラベル
6 位:大判印刷/大判プリント
6 位:出版印刷
オフセット印刷の場合、出版印刷は商業印刷の次に常に順位するが、デジタル印刷では6 位と低い。極小ロットは4 位のブックオンデマンドであろうが、出版の大ロットは依然としてオフセット機に優位性のあるだろう様子が分かる。
(研究調査部 藤井 建人 『JAGAT info』2015年7月号より)