※本記事の内容は掲載当時のものです。
印刷技術情報:見当不良・汚れ・ゴースト
乾燥不良による汚れの原因について(231)
【概要】
乾燥不良による汚れの原因について詳しく教えてください。
【解決方法】
乾燥不良による汚れの原因とは、裏移り(オフセッティング)の事だと思います。裏移り は、大きく分けて5つの原因があります。
1)インキ乳化によるもの。
インキの適性乳化率(インキ中の湿し水の量)は、15~17%と言われています。20%以上 乳化したものを、過剰乳化と言います。過剰乳化したインキはボソボソになり紙面上でイ ンキ表面は凸凹な状態になります。適性なインキの状態では、表面は平らになります。そ れをインキレベリングと言います。インキ乾燥も大幅に遅れて通常のインキ乾燥の1.5~2 倍位乾燥時間が掛かります。そのために、裏移りにつながります。
2)インキの盛り過ぎによるもの。
インキの盛り過ぎによる裏移りの原因は、不適切な校正刷りに色を合わせようとするため にインキを盛り上げることによります。校正刷りが標準濃度をはるかに越えた濃度になっ ているのに、それに色を合わせようとするからです。校正刷りにときたまダブリが発生し たものも有ります。印刷する前にルーペで必ず校正刷りをチェックして、不適当な校正刷 りの場合は上司に相談してください。特色印刷のとき、出来上った特色インキが薄めの場合、インキを盛り上げて色を合わせようとしますが、それも裏移りの原因になります。
3)紙質・紙くせによるもの。
紙質とは、被印刷体のことです。トレーシングペーパー・フイルム・アルミホイルなどの 非吸収紙などは、インキ中の石油系溶剤や湿し水が原単に浸透せず、インキの乾燥が大幅 に遅れるために裏移りが起きます。合成紙の印刷で、普通のインキを使用すると、イ ンキ中の石油系溶剤が合成紙に浸透して、合成紙のインキが乗った所は膨潤して膨れ上が り裏着きにつながります。合成紙の印刷には、合成紙用インキを使用してください。
再生紙の印刷でインキの擦れや、裏移りが増えています。再生紙は通気性が悪く、 吸油性・吸水性も悪いためインキの乾燥が遅れます。インキの表面がセットされたように 見えても、インキの下部は固まっていないことがありますので注意してください。
紙くせは、くわえ尻のベタ部などがカールする、エンドカールは困りものですが、用紙の目は、縦目より横目のほうがカールが少ない事があります。また、カールが発生した場合インキを柔らかくしますが、助剤に00ニスは使用せず、コンパウンドかレジュウサーを使うようにします。湿度の多い部屋に用紙を置いておくと、用紙は周りから湿気を吸い波打ち状態になります(ウエービーエッジ)。反対に湿度の少ない部屋に用紙を置いておくと、用紙は周りから水分が蒸発してオチョコ状態(タイトエッジ)にります。いずれにせよ、紙くせが悪いと裏移りにつながります。
4)静電気によるもの。
冬期の乾燥期には大気中の湿度は大幅に下がり、相対湿度(RH)は40%以下になりやす くなります。RHが40%以下になりますと用紙に静電気が起きやすくなり、25%以下にな ると静電気が起きます。用紙に静電気が起きると、フイーダーからの用紙の送りだしが悪く、2枚差し等でフイーダーストップの原因になります。一方デリバリサイドでは、刷られたばかりの刷り本と刷り本が静電気のために、ぴたっと吸い着いたようになり、裏移り事故になります。印刷室や製版室の湿度はRH60%±5%にしておかなければなりません。RH60%前後にしておくと用紙やポジフイルムなどに静電気は発生しません。
5)デリバリ部の紙の不揃い。
デリバリ部での紙の不揃いも裏移りの原因になります。排紙部の左右の寄せ木(サイドジ ョガー)と天地の寄せ木(バックジョガー)を紙サイズに正確に合わせなければなりませ ん。排紙される刷り本に左右の寄せ木が当たって、刷り本が左右に動く様では裏移りと言 うより、インキ面の擦れ汚れになります。裏にも着きます。デリバリ部で刷り本が、断 裁機で断ったように揃った時は裏移りは発生しません。
6)その他
印刷し終わったばかりの刷り本を、急激に動かしたり、刷り本の上に物を乗せたりするこ とは常識外のことです。しないでください。
インキの乳化が激しいときは、エッチ液と使用しているインキがミスマッチを起こしている場合があります。その場合エッチ液を変えてみるのも一つの方法です。
最も重要な事は、工場内の環境(温度・湿度)の整備でしょう。
「本記事の内容は、JAGATが印刷の技術者を対象として行なっている通信教育講座「印刷技術者トラブル対策コース」
「オフセット印刷技術者コース」の受講生から1993年から2000年までの8年間に寄せられた質問とその回答の中から編集しました。
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)