※本記事の内容は掲載当時のものです。
アナログ博物館:鋳造機の機能と特徴
1.手動鋳造機を理解する
1)構造
機械は鋳型と本体に分かれ,本体は鋳釜と手回し部分から成る。鋳型は上下が噛み合って活字を鋳込むと両方に開く。ハンドルを回すと鋳釜のピストンがポンプ式に作用して,鉛が鋳釜から押し出されて鋳型に流れ込み,しばらくして冷却すると鋳型がふたつに割れて活字が飛び出す。しかし,数回鋳込むと鋳型が熱して,鉛の凝固がおそくなるので,ときおり水を浸したボロなどで鋳型を冷やさねばならない。
2)仕上げ
出てきた活字は鋳込み時の尻がついているから,この尻をいちいち折って活字の四方をヤスリとヒッカキで仕上げる。仕上げたものを1列に並べて,折った尻の跡をカンナで仕上げる。欧文の出っぱり活字(kerned letter)も,これと同様に1本ずつヤスリをかけて仕上げなければならないので非常に手間がかかる。
3)特徴
この機械の特徴は,機構が簡単であるから,鋳型の交換が容易であり,活字の大小についても,手加減で回転の調整ができて,十分に湯(溶けた活字合金)のはいった活字ができることである。しかし,鋳造能力と鋳造後の活字の仕上げに相当の時間がかかるので,昭和の初めから逐次自動鋳造機に押されて,今日では特殊な端ものの鋳造にのみ用いられている。
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)