※本記事の内容は掲載当時のものです。
アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [企画]
4. 見積りの考え方
いろいろな基本的な見積りの考え方はひととおりではなく,以下のような方式があります。どのような考え方で見積もり計算をするのかは,各々の印刷会社によっても,印刷物によっても違ってきます。
4.1 総額方式
出版計画全体のなかから総予算をあらかじめ決めておく方式です,その範囲内ですべての費用を割り振り,各費用項目の積み重ねで総額がオーバーするときは,造本内容を変えます。
この方式の場合は,得意先も印刷会社も総額が変らないという安心がある一方で,造本作業の途中で何回か総額見積りをしながら造本仕様を決めていくため手間がかかります。組版や製版の段階で文字訂正などが予想以上に多くなると,印刷以降の仕様に大きな変更をきたすことにもなります。
出版の経験があまりない場合や,自費出版などの場合は,このような見積り方式になることが多いものです。また,出版物自体が商品でない場合などで,全体の予算枠を絶対にはずせないケースなどでもこの方式をとらざるをえません。
4.2 ページ数×部数×単価方式
報告書などのように,編集内容や判型・製本様式などがいつも固定化している文章中心の簡単な組体裁のページ物については,「ページ数×部数」で総額を概算することができます。過去の経験によって,印刷会社と相談して単価を決めておけば,印刷物の企画の段階で,毎回詳細に見積りをしなくても概略費用を知ることができます。
とくに部数が1,000部以下の場合,印刷料金や製本料金が最低料金として固定的な金額になりますので,総額はページ数に比例するようになり,即時に計算できる利点があります。研究所・大学・団体などの報告書・紀要・名簿などに活用できます。
4.3 工程段階別総額方式
一般に最も多く使われる印刷物の見積りの形式で,下記のような各工程別の料金を積みあげる方式です。
1.編集・レイアウト料金
2.版下・写植料金
3.製版料金
4.印刷料金
5.用紙料金
6.製本・加工料金
7.営業費
この場合は各工程内の明細はなしにして,各工程別での総額だけを把握するもので,どのような振り分けになっているかを理解すればよいというものです。
4.4 工程明細別単価×数量方式
常時各種の印刷物を発注し,その内容も多彩である場合に使われます。印刷会社でも受注金額は常時社内の基準料金と対応して決めるものですから,得意先に提出するしないは別として,各工程別の明細見積書は必ず作られています。
見積り項目は,各印刷団体などの資料や経済調査会調べの「積算資料」,また業界出版社・新聞社などで発行している資料を参考にするとよいでしょう。一般的な見積り明細項目は次のようになります。
[製作概要]
1.製作部数
2.判型
3.ページ数(色数別)
4.用紙
5.製本・加工様式
[造本内容別見積り]
1.レイアウト料金:ページ数×単価
2.トレスなど版下料金:点数×単価
3.文字処理料金:ページ数×単価(文字数×単価),+特殊組版代
4.製版料金:版数×単価,+レタッチ・合成などの料金
5.校正料金:色数×単価
6.刷版料金:版数×単価
7.印刷料金:(通し単価×通し数)×版数(台数×単価)
8.製本料金:部数×単価(場合により丁合い・折数などの明細)
9.用紙料金:用紙種類(質・寸法)×数量(連量)×単価
10.運賃・発送費:実費
11.営業費・消費税など
以上のような見積り明細が一般的ですが,実際の計算ではもっと細かくなります。
4.5 総製作費とコスト変動要因
印刷物を作る場合の総予算額はいろいろな要素で変ってきますが,ページ物の場合,次のような項目がコストの変動要因となります。
(1)ページの内容によるもの
・組体裁(表組,文字の書体,級数の多様性)
・カラー製版の複雑さ,カラー点数
・写真の点数や切り抜きなど
(2)判型
(3)ページ数
(4)部数
(5)用紙の種類
(6)製本・加工の様式
以上の項目のうち(1)・(2)・(3)は部数に関係のない固定費ですので,1,000部程度の場合は部数を少し減らしても総額はほとんど変わらないことになります。しかし,ページ数を減らせば総額がはっきりと減ることになります。
また逆に部数が10万部以上のような場合には,部数を減らせば総額が目に見えて減ります。判型を変えれば,当然総予算は大きく変ってくることになります。
1部当たりの原価でみれば,当然大量に作れば総額は大きくなりますが,1部当たりの原価は大幅に下がります。
この辺のバランスをどう考えるかは,印刷物の使い方,生かし方とあわせてよく考えなければなりません。
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)