※本記事の内容は掲載当時のものです。
アナログ博物館:ページ物印刷物企画 [原稿チェック]
3. 原稿整理
まず著者と編集者の間では情報内容の吟味といった意味でのチェックがあり,その後組版レイアウト作業を進めていくうえで,障害や問題点がないかどうかのチェックを行ないます。ここでは後者が対象で,その中のチェックポイントは原稿の組版指定に関するものと,原稿整理に関するものとの2つに分けることができます。
[原稿整理]
わかりやすく,読みやすい原稿にするために,組版レイアウト作業に入る前に原稿整理をする必要があります。原稿が未整理のままで入稿した場合は必ず校正での赤字が多くなります。たとえ不十分であっても最低限の整理をしたうえで作業に取りかかりましょう。
原稿整理は印刷物にするための文章の整理整頓作業のことで,これは刊行される本に,読者に対する誤解や難解さ・読みづらさ,また本としての欠陥があってはけないという考えに基づいています。
原稿整理をする場合に、どのように著者の意向・表現をくみとって尊重するかということです。著者個人の思想・信条を文字で表現したものが原稿ですので,意図的にうそ字・当て字を使ったようなものに要注意しなければならない場合もあります。
(1)誤字・脱字のチェック
誤字・脱字といっても常識だけでは判断できない面もあるので慎重に行ってください。著者が意図的にうそ字・当て字を使用する場合以外は,編集・校正の本に従って作業するのがよいでしょう。
(2)用字・用語の統一
同じ内容のことを表現する場合に,いろいろな用字・用語を用いることで読者が誤解をしないようにするものです。複数の人が執筆したり,書き始めと書き終りまでの間にかなり時間がかかっている場合は,用字用語のバラツキが出やすくなります。読者が理解しやすくするための統一方法を検討しておくとよいでしょう。
(3)文体の統一
基本は「です・ます」調,「である」調が混在しないようにするものですが,画一的に統一すればよいというものではありません。例えば箇条書き部分だけはその意図から「です・ます」調をやめ,「である」調に変更すると言ったような,使いわけの基準が必要になる場合もあります。
(4)漢字の使用範囲の設定
用字用語と似た問題ですが、漢字表現の範囲は文章の性格にかかわるものなので,慎重に対応しなければりません。教育書やハウツーもの,啓蒙書などではその発刊の目的から漢字の範囲を,教育漢字(996字),当用漢字〔1850字),常用漢字(1945字)といった基準に沿って決めるのが普通です。これらの範囲内であれば新字体使用が原則となります。
漢字に関しては,その他にも人名用漢字の新字体・旧字体・拡張新字体の採用・不採用・正字と俗字の区別など内容と関連して難しい問題がありますので,専門書または専門家に相談するのがよいでしょう。
(5)漢字の多様は避ける
副詞・接続詞など一般的には漢字を使用しない方がよいものは,できるだけひらがなで表現します。
例:度々→たびたび,概ね→おおむね
(6)旧かな遣いか,新かな遣いか
いまでは旧かな遣いはめったになく,だいたい新かな遣いと考えてよいでしょう。総括指定中にも新かな・旧かなの区別をすることが少なくなってきています。高齢の方の原稿でも新かな遣いにおきかえるのが一般的です。
(7)数字表記の統一
数字はタテ組とヨコ組では組み方が違ってきますし,本の内容・性質によってもアラビア数字・ローマ数字・漢数字を使い分けなければなりません。
また,同じ漢数字であっても一方式と十方式(例:「二一六」と「二百十六」)の区別などあります。これらの表記方法については,朝日新聞社や共同通信社,また日本エディタースクール出版部などから用字・用語や校正に関する本が発刊されています。これらは編集者にとっては必須アイテムです。
(8)単位記号の統一
キログラムとするかkgとするか,ミリメートルとするかmmとするかといったことです。これも用字用語と同様に一貫性が必要です。本の性格(文芸書か理工学書か経済書か)によって最も適した表現を選ぶことが大切です。
(9)人名・国名・外来語・学術用語の統一
日本人であれば旧字体にするか新字体にするか(澁澤榮一→渋沢栄一),外国人である場合は,日本語読みの表記にするか現地音によるカタカナ表記にするか(ベートーべン→ベートーヴェン)などを最初に決めておくと,あとは機械的に選択できるので楽です。
外来語・専門学術用語などは,信頼ある専門辞典をみつけて参照をしましょう。また,どのような辞典が信頼されているのかを含めて専門家の意見も必要でしょう。
(10)原稿を読みやすくする
手書き原稿では文字が一字一字マス目に記入されているか,促音・拗音(促音=っ・ッ,拗音=ゃ・ャ・ゅ・ュ・ょ・ョ)がハッキリしているか,挿入文章が明確であるか,改行箇所が明確か。改行の頭は1字下げになっているか,などのチェックを入力の前に行い,原稿に補助的に赤字を記入し表記を明確にしておきましょう。
(印刷情報サイトPrint-betterより転載)