時代は表面加工へ

掲載日:2015年10月21日

個々の話題は「速乾印刷」や「UV印刷」等色々あるが、印刷の大きな流れを見ていくと、表面加工の波が大きくなっているように感じる。

IGAS2015では表面加工にスポットライトが当たっているように思えた。DTPになって、時代はデジタルとDTP等のワークフローにスポットライトが当たっていたのだが、いつも頃からかDTPは儲からないと経営層に疎んじられ、人員的にも恵まれていないのが実情だと思う。正直な話、値付けや評価が少々不公平という感はあるが、ここでは置いておく。

そして注目を集めたのが、製本に代表されるポストプレスである。デジタル印刷機の台頭とともに、頭角を現してきたのが、スイスのHunkeler社で、かつては重厚長大な有名ポストプレス機の中では、どちらかと言うと手ごろ感で売っていたフォーム用製本機というイメージだったが、今や世界のポストプレスをけん引する存在となっている。同じく頭角を現してきたのがHorizonで、JDF連携やOne to oneという切り口で、全世界を相手にビジネスしているのは承知の通りである。

しかし、このIGAS2015辺りから、少し様相が変わってきたと言える。かつてのHorizonブースは毎回満員御礼で、全ブースの中でもベスト3には入る盛況ぶりだったが、今回辺りは客席に余裕があるように感じた。そしてその代りに注目を集めたのが、表面処理・加工である。

表面加工といっても様々で、ソフトタッチのようにラミネートするモノや、UVラミネート、UVニス、インキジェット等多岐にわたるのだが、大別するとまずプレプリント処理とポストプレス処理、つまり印刷の前処理と後加工に分けることが出来る。前処理は簡単に言えばインキの定着を良くするための前処理というもので、ボンディング剤の塗布等がこれに当たるが、今回のIGAS2015で特に目を引いたのがコロナ処理である。

コロナ放電で印刷面に微細な穴を開けて、インキの定着を良くするというものだが、Indigo20000(これはフィルムなので当然)だけではなく、厚紙対応のIndigo30000もコロナ処理ユニットが標準で装備されている。それ以外にはDscoopの参加企業として、ビーエヌテクノロジー社が、コロナ処理機を紹介していた。
かつての笑い話をご存知の方もいらっしゃると思うが、消しゴムで消えるという話は印刷ガチガチで育った人にとっては、許しがたいことだったのではないかと思う(昔話)。

このような事は印刷前のプレ印刷の表面処理によって、結果はかなり変えられるので、プレ処理は大きなファクタなのである。その内、印刷ノウハウの代表にプレ処理が挙げられるようになるのかもしれない。

ポストプレス処理(場合によっては逆)はUVニスや箔押し、エンボス等の技術だが、これに注目が集まっているといえる。

話は変わってJAGATではマーケティングオートメーションのように非マスマーケティングの中で、印刷がどのようにそのポジショニングが出来るかに真剣に取り組んでいる。かつてのマーケティング手法はマスマーケティングだったので、天才的なマーケッターが居れば、何とかなったし、その人に気に入られるようにカタログ・パンフを作っていれば、またチラシだって長年かけた人脈でやっていれば、顧客の満足度も高かったし、効果もそれなりに得られていたはずである。

しかし、世の中のマーケティングが、マスではなくなってしまったら、これはITツールと結びつくほかなくなるのだ。そして印刷を発注する顧客のほとんどがITツール(CRMやマーケティングオートメーションツール)を使い出したら、宣伝メディアの一翼を担う印刷業だって変って行かねばならない。そしてそんな印刷物で効果(差別化できること)を発揮するのが、デザイン、紙質、表面加工である。単なる色再現の正確さではなく、工芸品のような魅力が必要であるということだ。私は個人的に色再現技術を追求してきたつもりだが、これからは色以上に質感が大事になるということである。そこそこの色再現で良いから、それ以上の質感を大切にしたいということである。

そのためのデザイナーはグラフィックデザイナーというより、工芸家、紙や箔押し、エンボス加工に詳しい総合芸術家が必要になる。IGASでも様々な加工デザインが飾られていたが、もう少し品の良いデザイン(よくぞこれだけ品の無いデザインを揃えられたものだと感激?)が一般化すれば、表面加工の重要性がより、浸透するだろう。現時点では、この辺のデザインはやはり欧州に一日の長がある。

今までのカラマネのノウハウは活かせるようにしていきたいが、印刷ならではの質感も大切にしたデザイン性にJAGATでは注目していきたいと思っている。もちろんマーケティングオートメーションとのリンクが大事なことはいうまでもない。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)

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