組織とメディア
企業にとって顧客と同様に重要な利害関係者は、従業員を挙げることができる。従業員同士の円滑なコミュニケーションにより、企業は継続的な発展を期待できる。
組織とコミュニケーション
企業を代表とするさまざまな組織は、複数の人により構成されている。メディアコミュニケーションによる情報の受発信や合意形成は、組織の根幹を支える。実際の企業による経済活動は、従業員によって行われている。
企業の活動では、経営者が方針を示し、管理職が方針を理解しそれぞれの活動へ展開し、管理職が率いる従業員により実現していきく。組織内のメディアコミュニケーションは企業の活動にとって、非常に重要であり、必要不可欠なものとなる。IT(Information Technology)の発展により、組織内のコミュニケーションのあり方は、多様になるだけでなく、変化し続けている。
メディアコミュニケーションの種類
電子メールやグループウェアにより、組織内のメディアコミュニケーションは、大きく様変わりしている。全組織で共有すべき情報は、本部機能を持つ部署から、全従業員に向けられて発信されることが多く見受けられる。
デジタルメディアが普及する以前は、既存のメディアとして、社内報などのペーパーメディアが多く利用されていた。デジタルメディアが普及した後は、電子メールのほか、イントラネット上のBBS(Bulletin Board System:電子掲示板)やSNS(Social Networking Service)、ブログ(Blobg、Weblog)などを導入している組織も多い。
また、組織内における個人と個人によるメディアコミュニケーションでは、電子メールや電話が多く用いられ、緊急性が比較的高い場合や、言葉のニュアンスまで伝えたい場合に利用されている。緊急性が低い場合や、文章によって記録を残したい場合には、電子メールが用いられる。しかしながら、電子メールやBBSなどのデジタルメディアによるコミュニケーションは便利な側面、使用法を誤ると、思わぬトラブルの原因となる。
新たなメディアの問題点
メディアを使用しない対面によるコミュニケーションが可能な中で、既存のメディアが整理されないまま新たなメディアが導入されている状況では、組織内のメディアは多様化し、既存のメディアとの間で機能的な重複や非効率を生じる可能性がありる。利用されるメディアが多様化することで、メディアの選択による混乱や、メディアの選択についての調整、利用メディアの違いによるコミュニケーションの制限によって効率が落ちる場合がある。
さらに、コミュニケーションの非効率が高まるにつれ、コミュニケーション環境の有効性が低下する恐れもある。対策として、メディアについての利用ルールを策定することで、非効率な状況を改善できる場合もあるが、根本的な問題解決にはつながらない。導入されるメディアが多様化しても、利用されるメディアは同じ程度には多様化せず、飽和する傾向もある。職務の特性により、メディアの多様性に対する接点も異なる。
そこで、組織におけるメディアの導入と管理に関する幾つかの実践的な手法が考えられるが、高度情報化社会は、非効率が生じるほどにメディアが多様化した状況であるというのが現実である。
新しいメディア導入の理由
既存のメディアを利用しているにも関わらず、新たなメディアが導入される原因としては、組織を管理する上でコミュニケーションが重要視されることが挙げられる。コミュニケーションは組織が機能するために不可欠な要素であるばかりでなく、市場環境への対応や、新製品開発ににおける革新の形成にもその成否が影響している。このような中、新たなメディアが考案され、その効果が魅力的に訴求されることで、例え既存のメディアと機能が重複していても、新たなメディアの導入は、正当化される可能性がある。また、他社の採用や部署からの要望などにより、新たなメディアの導入が後押しされる場合もある。
さらに、目標とすべき優良な組織が、新たなメディアを導入した事例があれば、自らも導入しようと検討することになることも少なくない。あるいは、現状の問題を解決するために、新たなメディアの導入が必要であることや、既存のメディアではその問題が解決できないことに対する部署からの主張があれば、その導入を検討せざるを得ないこともあります。その場合、要望を出した部署のみが、新たなメディアを導入すればよいといった議論があることも予想される。しかしながら、一般的にメディアには、「ネットワーク効果」が働く。
ネットワーク効果
「ネットワーク効果」とは、相互に接続される製品やサービスに見られる性質の1つであり、「同一の製品やサービスを利用する人々が増加するほど価値が高まる」といった効果を指す。同様の概念としては、「通信網の価値は利用者数の二乗に比例する。また、通信網の価格は利用者数に比例する」といった「メトカーフの法則」がある。
また、1962年に米国の社会学者であるエベレット・ロジャース(Everett Rogers)が提唱した「クリティカルマス」は、ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となっている普及率を表している。この考え方を応用すると、双方向のコミュニケーションを実現するメディアについても、利用者数がある程度増加しないと十分な効果が期待できないために利用者も増えないと考えられる。したがって、「ネットワーク効果」や「メトカーフの法則」を参考に、利用者が多いほど効果が得られるメディアの性質を考えると、一部の部署だけが新たなメディアを導入し、限られた人だけに利用させることは、必ずしも得策であるとは限らない。
新たなメディアの導入へ
SNSは利用者の人間関係を可視化することで、新たな人的ネットワークの形成を支援するメディアの1つである。しかしながら、わずかな利用者でSNSを利用しても、真の価値を享受できる可能性はあまりない。このことから結果として、新しいメディアは組織に対し、全体的に導入されることが望まれる。
さらにITの低廉化は、新たなメディアの導入へのハードルを下げる効果が期待できる。ハードウェアについては、性能の向上と価格の低下が、飛躍的に見られる。加えてソフトウェアについても、オープンソースで提供されているものも多く、それらの組み合わせにより、低コストで実用に耐えられる情報システムの構築が可能になった。この傾向により、結果として安易に新たなメディアや情報システムの導入が試みられる状況となっていることも考えられるが、メディアやITに対する正しい見識を持つことで、「大きな改善」の可能性があるとも考えられる。