早いもので来春、新入社員・中途社員が入社予定の企業も多いのではないだろうか。大阪の印刷業界でも景気回復の声はほとんど聞かれず、定期新卒採用する企業も減少した。人口減少という先行き不透明な時代、企業戦略とともに人材育成は重要項目だ。いかに入社してくる人材を、より大きな成果を上げる社員に育成するかがポイントになる。
サバサバした新入社員の傾向
終身雇用や年功序列という制度が維持しづらくなった現在、若年社員は、以前のような会社への忠誠心や帰属意識は薄れてきた。
ちなみに「人並み以上に働きたいか?」という新人への質問には「人並みで十分」が増加(昨年52.5%→53.5%)、「人並み以上に働きたい」(昨年40.1%→38.8%)を大きく上回り過去最高となった(日本生産性本部調べ)。
また、「どのポストまで昇進したいか?」について、2005年と比べると、男性では社長という回答は大きく減少し(27.0→17.4%)し、部課長が増加した。一方女性は、専門職志向が低下し(34.1→27.2%)、部長が増加(7.2→10.5%)、女性の昇進志向が高まる傾向がある。さらに、「デートか残業か?」では「残業」(80.8%)が「デート」(19.0%)を圧倒し、プライベートより仕事優先という結果になった(が、ここ数年は「デート派」が増加中)。
「就労意識」「生活価値観」「対人関係」では、全体として職場や仕事へのコミットメントの低下傾向と淡白な印象で「サバサバした」傾向が見られるという。
採用時の質、量、方法を工夫する
新卒採用のトレンドであった「厳選採用」は最近の売り手市場の影響もあり緩んできたとされている。しかし、企業が求める個人への能力は高止まり、それに伴いより大きな成果を発揮できる人材を重視する傾向は継続している。
採用において、企業は学生側との間で現実に沿ったコミュニケーションの成立を目指している。なぜなら、ミスマッチや入社後の早期退職など最悪のケースを避けなければならないからだ。大阪では、学生が企業側(社長や人事担当)と飲食をともにしながら飾らず、互いを深く知るためのガチトークができる「ガチ就」という新たなスタイルもある。
具体的な採用には、応募者の質、量ともに重要だ。自社が求める人材を採用するためには、ある程度の応募者を集める必要もある。求める人材の目安は、種類や環境、条件等により異なるが、採用人数の10~30倍が基準だろう。
また、応募者の質はとくに重要だ。求める人材や基準を明確にすることで、より現実的な応募者を集めることができる。応募者を多く集めることはメリットであるが、逆に採用選考の手間が増加するというデメリットがあることも考慮する必要があるだろう。
受け入れ側にも準備が必要だ
採用後の新入社員の早期戦力化は実現できているだろうか?人材教育の中でも、高い意欲とモチベーションを持つ新人の早期戦力化は大切だ。新人が継続的に成長していくためには、自社や業界の情報はもちろん、早期段階における仕事の基礎や知識の学び方にある。
新入社員の教育手段は、比較的手軽に実施できるOJT(On the Job Training、仕事上指導)がお馴染みだ。しかし、有効に機能しているケースはそれほど多くはない。そもそも「見よう見まね」や、「手取り足取り」育成では主体的に行動する人材は育たない。
しかし多くの企業では、新人教育は入社後の短期間で済ませ、その後の育成は現場任せになりがちだ。したがって育成のスピードや教育効果は、配属先の先輩社員やリーダー・管理職の能力、力量によって大きく変わってしまう。
いち早く、自ら考え、動く、即戦力の人材に育てるにはノウハウがある。またOJTの効果を大きく左右する要因は事前準備にある。すなわち新入社員を受け入れる側も準備して、まっさらな新人を早期戦力にするノウハウを身につけることが重要だ。教育途中に辞めてしまうという大打撃を避けるためにも受け入れる側にもそれなりのスキルが必要ではないだろうか。
(西部支社長 大沢 昭博)
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