-印刷会社がクライアントに提供すべきもの【第2回】
ブランディングは顧客の問題を把握し、解決する結果を提供すること。それが付加価値や差別化等のメリットにつながる。
前回は、クライアント(顧客)のビジネス全体を支援するための、ブランディングの必要性について紹介した。では、実際にクライアントをブランディングしていくというのはどういうことなのかをこれから見ていく。
ブランディングで取り入れるものとして、販促の活動や広告販促物でのデザインはなどがあるが、これはブランディングではない。あくまでもブランディング活動の一環ではあるが、ブランディングそのものではない。クライアントをブランディングしていくということは、活動の基になるマーケティング戦略を構築していくところから始まる。ブランディングとは、それだけで行うことは不可能で、マーケティング戦略があってこそ成り立つ戦略である。そして、そもそもマーケティング戦略とは、どのように経営していくかという戦略的な思考があってこそ成り立つものなので、経営支援的な意味合いを持つということを踏まえておきたい。印刷物を提供してビジネス支援ができるのではなく、クライアントの売上や認知度アップ、販促の成果、付加価値を高めるというような、経営に直結する成果をサポートしてビジネス支援をすることである。
ブランディングとは「(クライアントの)顧客に企業側が意図したメリットを正しく認識してもらうための活動」である。伝えるべきメリットとは「顧客の抱える問題(課題)解決」であり、顧客にとっての問題を解決できる企業として認識されて、実際にその通りの問題解決をすることが目的である。ということは、ブランディングでは、顧客の問題は何かを把握する必要がある。その問題を企業としてどのように解決できるかを、コンセプトとしてまとめあげることで、ブランディングの戦略がスタートしていく。顧客の問題といっても、世の中にいる消費者全ての問題を把握することは現実的に無理であるし、把握できたとしても企業として解決できないものであってもいけない。顧客はどのような人(法人含)でどのような問題を抱えているのかを把握する。
実際にブランディングのコンセプトや戦略を構築する際に、企業が顧客に提供しているものは、その企業が扱う商品やサービスではなく、顧客の問題解決を提供しているという意識がブランディングのコンセプトや戦略を構築する際には必要になる。今まで通りに商品やサービスを提供している意識であれば、競合他社と機能や価格などで比較され、価格競争にも陥る危険性もあるだろう。しかし、企業は商品やサービスではなく、問題解決を提供することでしているのであれば、その問題を抱えている顧客にとって、他にはないものとして認識される。これが競合他社との差別化になになっていくのである。これを付加価値として大きくし、顧客に伝え提供していくのがブランディングの活動である。
企業から提供されるもので、顧客は問題解決という結果を得たらどうなるだろうか?商品やサービスを提供していたら、それに対してお金を返すことになる。しかし、顧客が問題解決の結果を得た場合は、満足や信頼、尊敬というような感情を、お金に変えて企業側に返すことになる。それによって、顧客はその企業のファンとして長く利用をしてくれることになる。
印刷会社がクライアントをブランディングしていくということは、販促物等の印刷物を提供するのではなく、それによってクライアントの売上や認知度アップ、販促の成果、付加価値を高めるという成果を提供できることになるのだ。ブランディングの戦略を構築し、それを顧客に伝えるためのデザイン・クリエイティブや販促活動まで、一貫した表現で落とし込むことで、それが達成されるのである。そのためにクライアントの商品やサービス、そして対象になる顧客までを把握し、ブランディングの戦略を構築しなければならない。クライアントとの深い関係性も構築する必要があり、クライアントの印刷会社への認識も徐々に変化していくことであろう。
次回以降は、印刷会社が取り組むべき実際の戦略構築の流れについて触れていきたい。
小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー http://www.brand-mgr.org/
目次 | ||
第1回 | 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング [2015/10/23] | |
第2回 | 印刷会社がクライアントに提供すべきもの [2015/11/27] |
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第3回 | 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ [2015/12/01] |
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第4回 | 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは [2016/01/05] |
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第5回 | 顧客の心の中で自社を占めるポジショニング [2016/02/05] |
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第6回 | 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 [2016/03/08] |
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第7回 | ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる [2016/03/11] |
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第8回 | デザインを統一するトーン&マナーのつくり方 [2016/04/8] |
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第9回 | ブランド・イメージをユーザーに届けるためのデザイン表現方法とは? [2016/05/12] |
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第10回 | ユーザーの購買意欲を喚起する写真、イラストの選定方法 [2016/07/15] |
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第11回 | ユーザーの購買行動を促す広告・販促物に必要な視点とは [2016/08/19] |
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