負の製品を見える化するMFCA

掲載日:2016年2月9日

MFCAとは管理会計の一種で、マテリアルフローコスト会計(Material Flow Cost Accounting)の略称である。2011年にISO14051として国際標準となっている。
MFCAの最大の特長は、負の製品、すなわち各工程で産出される製品にならなかったあらゆるもの、印刷工程でいえば、ヤレ紙、ヤレ紙に着いたインキなどを金額換算して扱う点にある。 通常の感覚では、良品をつくるためにやむを得ず廃棄物もできて、その部分のコストは良品のコストの一部として扱うというものだが、MFCAでは、正の製品も負の製品も全く同じように扱う。例えば、リンゴジャムを作るためにリンゴの皮をむくとして、皮むき工程とはジャムで使うリンゴの実を取り出す工程ではなく、リンゴの実(正の製品)とリンゴの皮(負の製品)の二つを作り出す工程と定義される。リンゴの皮をむくのにかかる時間、労力、お金は、リンゴの実とリンゴの皮のそれぞれに配賦する。配賦の比率を決定するのは「重さ」となる。なぜなら、皮むき工程に投入する前のリンゴの重さと皮をむいた後のリンゴの実と皮の重さの合計は等しいからである(厳密には水分が飛んではいるだろうが)。

こうして、負の製品を経済評価して「見える化」することでムダな部分をあぶり出し、そのムダを削減することで、どの程度の効果が得られるかを金額で表すことができる。なるべく少ない材料(リンゴ)で必要なもの(リンゴの実)を得るための投資(皮を薄くむける道具)の妥当性についても合理的に判断することができる。 このように省資源という環境対応とコスト削減という経済性とを両立できる点が、MFCAの最大の利点である。

削減されるのは材料費だけでない。投入する材料が減ればその工程で使用するエネルギーも減るし、より短い時間で生産できれば、その分の人件費も浮くことになる。また、対象となる材料は直接材料(用紙など)だけでなく、副資材(湿し水、洗浄剤など)も含まれる。

MFCAで扱うコスト要素を整理すると以下の4つにまとめられる。
1) マテリアルコスト マテリアルのインプット価値(物量と金額)
2) エネルギー エネルギーのインプット価値(物量と金額)
3) システム 人件費、減価償却費、管理費など
4) 配送・処理 産廃の処理費用など

最近、環境対応とコスト削減を両立する製品として、現像レスCTPが話題となっている。現像タイプと現像レスタイプの比較をMFCAの考え方で行うと面白いように思う。刷版の枚数自体は変わらないが、現像液、水、ガム、電力、廃液処理コスト、それから現像液の管理に関わるコストは確実に削減される。

MFCAは管理会計の一種なので、最終的には企業経営に役立たなければ意味がない。経営への活かしかたの一例を紹介する。通常、損益計算書の製造原価の種類はひとつしかないが、これを正の製品に関わる製造原価と負の製品に関わる製造原価の二種類で計上する(図1)。如何に負の製品に関わる製造原価を下げるかということに着目しつつ、トータルの製造原価を下げていく活動を行う。そして図2のような結果が得られれば、それは資源を有効活用して環境負荷の低減を図っている証しとなり、CSRという観点でも非常に有効と思われる。 mfca_zu1 mfca_zu2  参考文献 ムダを利益に料理するマテリアルフローコスト経営

CS部 花房 賢

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