印刷業における地域活性ビジネスへの取り組み状況や仕事の増減、収入の内訳などの実態についてJAGAT『印刷会社と地域活性vol.3』レポートの中から内容を一部紹介する。~JAGAT「印刷会社と地域活性vol.3」レポートより(1)
JAGATでは、2011年から地域課制化における印刷会社の可能性を模索すべく調査研究行っている。2012年末に会員企業に対して「印刷会社の地域活性化」に関する初のアンケート調査を実施、2014年夏に第2回調査、2015年秋に第3回調査を実施した。2016年2月上旬に、第3回アンケート調査結果をはじめ、印刷会社のフリーペーパー発行状況とその可能性、観光活性化と地域創生の現状、業界内外の取り組み事例や地域活性ビジネスのキーワードなどを盛り込んだ、『印刷会社と地域活性vol.3』を発刊した。今回はその中から、アンケート結果を通して見えてきた印刷会社における地域活性ビジネスの実際を紹介する。
6割強の刷会社は地域活性に取り組んでいる
第3回調査の結果を見ると、回答企業の6割強はいずれかの地域活性ビジネスに取り組んでいると分かった。2014年調査と比較すると微減しているが、毎回新しい回答企業が増えていると考えると、地域活性ビジネスに取り組む・取り組まないに関わらず、印刷会社の関心は高まり続けているといえる。
取り組み始めた時期を見ると、「1~3年前」「4~6年前」はともに16.9%、「7~15年前」は28.2%、「それ以上前」は23.9%、「創業時から」は8.5%となった。2014年調査と比較すると、観光や地域資源による地域活性化に関する法案が施行され始めた「7年以上前から」取り組む会社が、53.8%から60.6%と、6.8ポイント増加した。
印刷は都市型産業であるため、仕事は産業集積地である大都市圏に集まりやすい。一方、地方には地域の印刷を始め情報加工・発信を一手に引き受け、地域と共に成長してきた会社が多く、早い段階から地域貢献を意識し、何らかの活動をしてきた。
2012、2014年調査ではこの印刷業の特色が取り組み時期に表れていたが、今回調査では中長期に取り組む会社が増加しているため、印刷会社における地域活性ビジネスの取り組みは一過性ではなく、導入期を経た次の段階に入っていると考えられる。
堅調に増える地域活性ビジネス
前年と比較した地域活性ビジネスの割合は、「かなり増えた」会社が12.3%、「少し増えた」会社が35.6%と、「増えた」と実感する会社が全体の約半数ある。2014年調査はでは、6割強の会社が「増えた」と回答していたため、若干落ち着いたように感じるが、「変わらない」と答えた会社の41.1%をプラスすると、約9割の会社において一定の地域活性関連ビジネスがあるといえる。
ただ、一定の仕事はあっても、現時点では各社の総売上に貢献しているとまではいえない。地域活性ビジネスの現在の売上比率を見ると、「0~4%」が全体の75.0%(前回73.2%)と最多回答になった。
しかし、残り25.0%の内訳は、「5~9%」は15.0%(前回16.9%)、「10%以上」は10.1%(前回9.8%)と、地域活性ビジネスが事業の一角になりつつある会社もある。
「フリーペーパー(無料)」と「工場、会社見学の受け入れ」が最多
現在の取り組みの最多回答は、前回調査に続き「工場、会社見学の受け入れ」と、前回調査で3位だった「フリーペーパー(無料)」で、ともに45.7%だった。地域社会と密接な関係を維持・構築しつつ、自社に蓄積された地域情報を印刷会社の強みを生かして加工発信し、地域コミュニケーションのハブ役を担う印刷会社が多い。次点は「自社オリジナル商品・キャラクター開発」の34.3%(前回16.3%)、「商店街活性化」の31.4%(前回22.5%)である。
2014年の回答と比較すると、「自社商品開発」や「商店街活性化」、「地域ブランディング」や「観光支援ビジネス」など、地域の魅力や課題を把握し、それを商品や企画に落としていく取り組みが増加している。印刷会社が従来から持つ専門性や能力に、マーケティングやプランニング、クリエイティブ力を付加しようと試みる印刷会社の様子が見受けられる。
次回は、「地域活性ビジネス」への取り組み体制や「取り組む際の役割」、「今後取り組みたい地域活性ビジネス」などについて見ていく。
(研究調査部 小林織恵)