フリーペーパー・フリーマガジン市場は減少傾向にあり、印刷会社が手掛けるビジネスとしても厳しさを増している。しかし、手掛けることによって収益への貢献だけではない副次的なメリットもある。
電通の「2013 年 日本の広告費」によると、「フリーペーパー・フリーマガジン」は、2年連続で増加したプロモーションメディア広告費の中で「折込」「DM」「電話帳」とともに前年割れとなった。紙のプロモーションメディアから、インターネット広告市場へ移行が進んでいるようだ。その中でも、「フリーペーパー・フリーマガジン」はこの数年間ずっと前年割れが続いており、広告のビジネスモデルとしての市場縮小は止まっていない。
印刷会社の中には「フリーペーパー・フリーマガジン」を自社で発行するところもあり、地方ではその地域を代表する「フリーペーパー・フリーマガジン」となっているものもある。しかし、大都市圏に比較すると広告主が限られる地方では広告モデルでの発行は厳しさを増している。そのような状況で「フリーペーパー・フリーマガジン」を印刷会社が手掛けるメリットに何があるだろうか。
『JAGAT info』9月号の経営インタビューに登場いただいた石川印刷(佐味貫義社長)では、能登地方の活性化に貢献したいという思いでは創刊したフリーマガジン『Fのさかな』を発行して、既に8年になる。フリーペーパーの祭典「ARUNOアワード2011」では大賞を受賞するなど、そのコンテンツクオリティをはじめ高い評価を受けている。『Fのさかな』の制作は、同社社員が、通常の印刷業務の合間に、企画から取材・執筆・編集のすべてをこなしている。佐味社長は『Fのさかな』を発行するメリットを幾つか挙げてくれたが、一つにはすべて社員で手掛けることによる社員の成長と、自らコンテンツが持てることがあるとのこと。さらに地域の情報がいろいろと入ってくるようになること、『Fのさかな』発行元であるということでのイメージアップで新規開拓につながるなどの副次的な効果などである。
また、同誌は、県内だけではなく、東京都内や近県の道の駅、大阪と名古屋の石川県事務所などで配布しており、『Fのさかな』を起点として新たなビジネス展開につながっている。例えば『Fのさかな』WEBでは同誌と連動する形で能登の特産品や食材などの通信販売を手掛けている。
地方の印刷会社にとっては、広告市場としてだけみればフリーペーパー・フリーマガジンを発行することは賢いビジネスとは言えないかもしれないが、独自コンテンツの獲得、そこを起点にした新しいビジネス展開が期待できるのであれば、十分にメリットはあると感じた。
『JAGAT info』9月号では、石川印刷佐味貫義社長の経営者インタビューのほか、印刷産業経営動向調査2014より設備動向、JAGAT会員のシール・ラベル印刷発注状況についてのアンケート結果を報告する。
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