印刷業における地域活性ビジネスへの取り組み体制や仕事の増減、収入の内訳などの実態についてJAGAT『印刷会社と地域活性vol.3』レポートの中から内容を一部紹介する。~JAGAT「印刷会社と地域活性vol.3」レポートより(2)
地域活性化は別団体、異業種と共に取り組む
地域活性ビジネスへの取り組み体制で最も多いのは、「別団体(JC、商工会議所など)」(51.4%)であった。次点には僅差で「異業種との連携」(50.0%)が続き、3番目は「自社のみ」(45.8%)という回答になっている。2014年調査と比べ、「異業種連携」と「自社のみ」が入れ替わった。
上位3つの選択肢について、2012年、2014年調査と比較すると、2012年は多い順に「自社のみ」「別団体」「異業種連携」、2014年は「別団体」「自社のみ」「異業種連携」と上位2つが逆転している。さらに、2015年は「異業種連携」と「自社のみ」が逆転した。地域活性ビジネスにおいては、目的である地域の活性化を達成するため、業種・団体にこだわることなく、互いの能力・強みを生かしあう体制を採用するケースが増えているようだ。
しかし、「最も力を入れている取り組み体制」は、「自社のみ」(31.9%)が最多回答、次いで「別団体」「異業種連携」はともに20.3%だった。地域の活性化、課題解決に、他団体と連携してややボランティア的に取り組むも、最終的には自社へのコンテンツ・ノウハウ蓄積に重点を置く企業、自社のみの方が機動的で小回りが利くと考える企業が多い。
社内で地域活性ビジネスに取り組む人員はどのくらいか。回答結果によると、1、2名から50名と回答者によるばらつきは依然として大きい。企業規模などの要因もあるだろう。最多回答は「4~6人」の31.4%(前回28.8%)、次いで「1~3人」の23.5%(前回35.6%)と、前回調査の上位2つが入れ替わっている。次点は「それ以上」の21.6%。事業に関わる平均人数は11.4人と前回調査の6.7人と比較して4.7人増えていることから、より多くの社員に地域活性活動への参加を促す企業が増えていると考えられる。
現在は自己資金・広告費、将来は企画・製作費を収入の柱に
現在の地域活性ビジネスの収入内訳について上位3つを聞くと、「自己資金(持ち出し)」(52.8%)、「広告費」(43.1%)、「各種制作費」(41.7%)となった。前回調査との比較すると、「自己資金」が14.6ポイント、「広告費」が6.3ポイントと、大きく増えている。
本誌特集でも述べているが、印刷会社が発行するフリーペーパーは、広告費を求めるもの、自由度の高い媒体を志向し自己資金で発行するものなど、様々である。今回調査の回答企業における現在の取り組みで最も多い地域活性事業が「フリーペーパー(無料)」であることも、この結果と多少関連しているかも知れない。
今後望む収入内訳では、「企画費」の構成比が45.8%と最も高く、次点には「各種制作費」(43.1%)が続いた。
今後取り組みたいのは3回連続「地域ブランディング」
今後の取り組みで最も人気があるのは「地域ブランディング」(46.5%)で、約半数の回答を集めた。この結果は、2012年冬に行った第1回調査から3年連続である。続いて、「観光支援ビジネス」(45.1%)、「商店街活性化」(43.2%)、「観光イベント」「地域オリジナル商品・キャラクター開発」(各39.4%)である。地域や地元商店街などの知られざる魅力を発掘、ブランド化・商品化しながら人や財を呼び込む仕組みを構築し、地域の活性化を目指す姿が浮き彫りになった。
今回は、アンケート調査から一部抜粋してレポートしている。『印刷会社と地域活性vol.3』本誌ではほかにも、自社における地域活性ビジネス売上比率や位置付け、興味を持つ地域活性キーワード、項目によっては地域ごとの分析も掲載している。
通算3回の調査結果から、印刷会社の役割が「印刷物製作」だけでなく、より上流の「プランニング」まで拡張していることがわかる。それは、自社に直接的な利益をもたらす企業活動ではなくとも、地域を豊かにするまちづくりに参画することで新しいネットワークを構築、地域情報の集積地、デザインを含めた印刷ノウハウなど会社の強みを認められ、地域経済を再構築するコアメンバーとして地域からの信頼を獲得しているからだろう。
今後、地域とともに成長する構図を描いた活動を続けることが、地域に必要とされる印刷会社として存続していくために重要になってくる。アンケートを始めとした各種調査を続けながら、ビジネスのあり方や可能性を明らかにしていきたい。
(研究調査部 小林織恵)
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