-ブランディング×デザイン力で印刷会社のソリューション力を高める【第8回】
デザイン表現をルール化したトーン&マナーを決めて成果を出すには、ブランド・アイデンティティを明確に表現する必要がある。
前回は、ブランドの世界観をつくるものとしてトーン&マナーを紹介した。ブランド表現では、ブランド・アイデンティティの一貫性と明確性が求められる。トーン&マナーとは、ブランディングにおけるデザイン・クリエイティブの表現をルール化したものである。広告・販促物のデザイン表現の意味・理由付けの根拠となるとともに、関係者間での意志統一や共通認識を得ることができる。
ブランド・アイデンティティからデザイン・クリエイティブ表現に落とし込むには「クリエイティブジャンプ」と言われる発想の転換が必要で、経験や感覚によるところが大きい。ただし、これだけではデザイナーなど制作者自身が納得できても営業や関係者との意思統一やクライアントへの提案には不十分である。多少のクリエイティブ・ジャンプは必要としても、トーン&マナーの構築による理論づけが不可欠となる。
トーン&マナーでは、まずは以下の3つをデザイン・クリエイティブのルールとして設定することを勧める。
・キーフォント:広告・販促物のメインになるフォント(書体)
・キーカラー:メインになる色、または配色
・キービジュアル:メインになるイメージ写真やキャラクター
ある媒体では「このフォントでこの色」、別の媒体では「あのフォントであの色」などと担当者によって異なる表現をしてしまっては、ブランド・アイデンティティは分断されてしまう。まずはこれら3つの要素を関係者全員で共有することが第一歩である。
デザイン・クリエイティブ表現を考えるうえでは、ブランディングの戦略構築の様々な過程を踏まえた発想が求められる。例えば、『ターゲティング』では、ブランドのターゲットはどのようなクラスのライフスタイルなのか、どのようなタイプの趣味趣向・感覚を持っているか、これらを確認していく。ターゲットのクラスやタイプから、どのようなフォントやカラーが候補として出てくるのかが見えてくる。
また、ブランディングの戦略構築ではターゲットの心の中で自社がどのような位置を占めるかという『ポジショニング』という過程も紹介した。いくつかのフォントやカラー、ビジュアルといった候補から自社のポジショニングに合わせたものを採用していくことでデザイン・クリエイティブ表現がしやすくなっていくのである。
次回は、ターゲティングとポジショニング、そしてブランド・アイデンティティから具体的にどのようにトーン&マナーを決定していくのかを見ていきたい。
小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー http://www.brand-mgr.org/
目次 | ||
第1回 | 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング [2015/10/23] | |
第2回 | 印刷会社がクライアントに提供すべきもの [2015/11/27] |
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第3回 | 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ [2015/12/01] |
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第4回 | 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは [2016/01/05] |
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第5回 | 顧客の心の中で自社を占めるポジショニング [2016/02/05] |
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第6回 | 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 [2016/03/08] |
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第7回 | ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる [2016/03/11] |
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第8回 | デザインを統一するトーン&マナーのつくり方 [2016/04/8] |
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第9回 | ブランド・イメージをユーザーに届けるためのデザイン表現方法とは? [2016/05/12] |
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第10回 | ユーザーの購買意欲を喚起する写真、イラストの選定方法 [2016/07/15] |
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第11回 | ユーザーの購買行動を促す広告・販促物に必要な視点とは [2016/08/19] |