印刷業の向かうべき、「新しい未来」

掲載日:2016年4月6日

JAGAT専務理事としてちょうど一年がたちました。不慣れなポジションを支えていただいた事への感謝と今期1年の決意を込めて2015年を振り返り、この先1年の豊富を語ってみたいと思います。

2014年10月のJAGAT大会では、米国のジョー・ウェブ博士を招き、講演していただきました。それがきっかけで“THIS POINT FORWARD”という近著の邦訳版を『未来を創る』と題して、2015年4月にJAGATから出版しました。

2015年度のJAGATは「未来を創る」で取り上げていたテーマにフォーカスして、そのポイントを解説し、皆さんと共に印刷業の未来について議論してきました。 印刷業界での講演会やセミナーの多くは、印刷機をはじめとした機械の性能や品質についての話題がほとんどで、このようなセミナーに集まる人たちには「品質さえ良ければ仕事は自動的に付いてくる」という風潮があることは、否定できないことだったと思います。

『未来を創る』では、これまで重視されてきた「高品質で」「短納期で」「低価格で」というキーワードだけではなく、「この印刷物で、これだけ売り上げを伸ばせる」「こういうITシステムとリンクすれば、印刷物の効果がこれだけ上がる」というように、「いかに印刷ビジネスを作り出すのか?」「闇雲にばらまくだけの印刷物は時代に合っていないと言われていたが、やり方次第によってはその価値を何倍にもできる」というように、造注(注文を造り出す)やビジネス創出につながるヒントが書かれています。

そして、現在進行形中の印刷ビジネスにしても、そのビジネス領域を拡げ、印刷の周辺を取り巻くサービスまで提供できれば、売り上げアップに必ずつながるだろうと指摘しているのです。つまり、サービスプロバイダーとして印刷ビジネス拡大を目指し、単なる印刷受注業者としてではなく「総合的に印刷発注者のためになるには、どうすれば良いのか?」を考えれば、印刷業としてのBPOビジネスだって現実になってくるはずだということです。

この1年、このようなポイントをしつこく追い求めてきたつもりです。 その一つの例が、マーケティングサービスを印刷業が始めるということで、マーケティングオートメーションやCRM、SFA的なソリューションと印刷がリンクしてビジネスをする方向性に注目してきました。正直、「賛同者を見つけるのは難しいかな?」とも思っていましたが、多くの共感者(社)や実践者(社)がいてびっくりしております。今後はこのベクトルがより確実になるように、JAGATとしては最大限ヘルプしていきたいと考えています。

また2015年のJAGAT大会では「ニッチビジネス」を取り上げ、競争無き競争戦略としてコスト競争に陥らない印刷ビジネスを考えました。そしてニッチビジネスはpage2016でも再度取り上げ、大きな反響をいただきました。JAGATの実質的な創立者である塚田益男元会長の言葉の中では、「活字よ、さようなら」が最も有名ですが、塚田益男元会長は1967年のJAGAT創立時代からニッチという言葉を著述に残しています。ニッチという言葉を知る日本人は誰一人としていなかった時代ですから、塚田益男元会長の卓越した先見性には改めて驚かされます。ヨーロッパの高級ブランドとは意味合いが異なりますが、お金の取れる印刷物、高級品としての印刷物(誤解されるかもしれないので、これはコスト競争に陥らないような印刷物)の必要性を、考え直す時期に来ているのだろうと思います。

JAGAT は 1967 年の設立以来、日本で唯一の印刷系シンクタンクとして活動してまいりました。来年(2017年)5月には創立 50 周年を迎えます。この節目の1年に未来の印刷業界、未来のJAGATのためにできるだけのことをやろうと、50周年プロジェクトを発足させ、全社的に取り組んでいきます。また本年度はdrupa2016の開催年度でもあり、そのdrupa2016をヒントに、新しい時代のpage2017イベントに脱皮させようと思っています。特に印刷会社自身の展示等、新しい時代に向かって可能性はたくさんあります。 研究・調査活動のいては研究会を2015年度に再編しましたが、その真骨頂を発揮するのは2016年度だと思っています。

従来の組版・製版・印刷技術とクロスメディア、マーケティングの融合した未来の印刷ビジネスを何とか具現化したいと思っております。また、セミナーの見直しなど、カリキュラムを再編して、よりタイムリーな情報発信や教育が提供できるようにしていきます。今期も職員一同頑張りますのでよろしくお願い申し上げます。

(JAGAT専務理事 郡司秀明)