日本語組版とつきあう その56
漢文の基本的な字間
漢文の基本的な字間処理としては、次の2つがある。
(1)原則として漢字の字間を空けずに文字を配置する方法(以下、“漢文ベタ組”という、図1に例を示す)。
ただし、ベタ組とはいっても、送り仮名や読み仮名の字数が多い場合、漢字の字間は空くことも多い。
(図1)
(2)設定した最低のアキ(字間)を確保して配置する方法(以下、“漢文アキ組”という、図2に例を示す)。
設定する字間としては、二分アキ、四分アキなどがある。
漢文ベタ組は、引用して掲げる場合などに利用されている。
漢文アキ組は、漢文(特に漢詩)を鑑賞の対象として取り上げる場合などに利用されている。
なお、漢文アキ組の組版処理は、原則としては漢文ベタ組の考え方をとりながら、一定の字間があることや、また、文字サイズを大きくする場合もあり、様々な工夫がされており、その処理は個別の事情によるともいえよう。
(図2)
以下では、漢文ベタ組の処理法に限り解説する。
句読点・括弧類の配置処理
漢文ベタ組の句読点・括弧類の処理は、通常の日本語組版における処理と同様である。句読点・括弧類の字幅は二分で、原則としてその前、その後ろは二分アキとする。行頭禁則、行末禁則も同様である。これらが連続する場合の処理も同様である。
ただし、送り仮名の字数が多く、送り仮名が該当する漢字からはみ出した場合は、その漢字と句読点との間はベタ組のままとし、句読点の後ろを空ける(例は図3)。
(図3)
返り点の配置処理
漢文につく返り点は、次のように配置する。
(1)返り点の文字サイズは、そこに使用している漢字の文字サイズの1/2とする。ただし。レ点と、一二点の“一”、上下点の“上”などが同じ位置にきた場合は、二つの返り点を組み合わせて、天地・左右のサイズを漢字の文字サイズの1/2にする(例は図4)。
(2)返り点は、返読を示す漢字の直後に、返り点の外枠の左端を漢字の外枠の左端にそろえて配置し、返り点の前後に配置する漢字との字間はベタ組とする(例は図4)。ただし、送り仮名および/または読み仮名文字列が漢字の上端および/または下端からはみ出した場合は、返り点の後ろを空ける(例は図4)。
なお、図4のようにレ点と同じ位置にくると考えられる返り点の組合せには、“一”、“上”、“甲”および“天”の4種類が考えられる。しかし、レ点と“甲”および“天”とが同じ位置にくる例は少ない。
(3)返り点、さらに、その次に句点または読点と続く場合は、図4のように、漢字と返り点の両者の外枠の左端をそろえてベタ組で配置し、句点または読点を漢文の漢字の文字サイズにして、返り点に重ねて漢字とベタ組で配置する。
(4)返り点は行頭に配置してはならない。(返り点と、その前の漢字は一体のものであり、この2つを2行に分割しないという考え方である。)
(図4)
なお、レ点(レ点および返り点“一”などとが同一位置につくものは除く)については、前の漢字ではなく、後ろに配置される漢字につくという考え方もある。この考え方を採用し、レ点は行末に配置しないで(行末禁則)、行頭に配置するという方法をとっている例もある(JIS X 4051では、この考え方による配置方法は規定していない)。
この方法では、送り仮名および/または読み仮名文字列が漢字の上端および/または下端からはみ出した場合は、レ点に限り、その前を空ける(図5の右の例)。
(図5)