カラーマネジメントの世界と言っても千差万別で、デジタルサイネージがカラマネ対応されていないという理由だけでカラマネを諦めていては、大きなビジネスチャンスまで諦めてしまうということになる。
今までJAGATでは、iPadのICCプロファイルを作成し、実質的なカラマネが出来ることを実証して見せてきたが、Webからいきなり電子書籍や動画の世界に入ってきた人にはイマイチ理解できなかったようである。今回は初歩的な解説から始めてみたい。
モニターには個々の見え方(個体差)があり、その特性をICCプロファイルというものに集約して、そのICCプロファイルに従って色の出方を調整すれば色が合うという仕組みをカラーマネジメントシステム(CMS、略してカラマネ)という。iPadやGalaxyがカラマネに準拠していれば、ICCプロファイルを各画像に添付し、そのICCプロファイルと電子書籍端末モニターのICCプロファイルを参照して調整するので、正確な色が表示できるというわけであ る。
これが基本だが、残念ながらiPad(基本ソフトであるiOS)やAndroidは現在のところカラマネ対応していないため、「画像の RGBデータをiPad用に書き換えてやれば良いのでは?」というのが、いつも言っている私の提案である。具体的な方法は、Photoshopのプルダウンメニュー編集から「プロファイル変換」を選択し、求めたICCプロファイル(例えばiPad_D65_101028.icc)を選択し、OKボタンを押してRGBデータを変換してやれば、iPadでまともな色に再現されるようにデータ自体が書き換わるのだ。
昔々、iPadの Pagesでプロファイルチェック用のHTMLファイルを検証したのだが、iPadのOSが3.2の時代には確かにカラマネが効いていたのだ。試しに iOS4.2.1だとまったくカラマネが効いていなかった。このように技術的にはカラマネ機能をのせることくらいなら、難しいことではないということなのである。しかしICCのカラーマネジメントに慣れていない人たちには少々ハードルが高いので、カラマネはコンテンツを作るプロに任せてRGBデータをデバイスに合わせて変換してやれば良いというのが、現在のコンセンサスだ。
Windows10のようにタブレットとパソコンの両刀遣いみたいものもあるので言い方が難しいのだが、パソコンとして動かす場合、ブラウザベースならIE11も含めてほとんどがカラマネ対応なので、その機能を使えばカラマネが実現出来る。しかし基本は静止画で、動画ファイルはICCプロファイルを埋め込めないので対応していないといえる。静止画を動画にまとめるソフトなどでは、ICCプロファイル対応などもあるので、実質的にはカラマネが可能だともいえる。
こんなICCプロファイルのハンドリングに一番慣れているの印刷業界なのである。また白色点についても印刷業界の人間がおそらく世界で一番敏感である。白色点を「6500Kで取るか?」「9300Kで取るか??」「5000K で取るか???」によって、見え方に雲泥の差があることはお分かり頂けると思うが、この辺のトラブルは未だ散見されるのだ。
特に日本のアニメは世界的なコ ンテンツなので大変である。北米等では6500Kに昔から統一されているので問題は少ないともいえるが、日本ではブラウン管時代に少しでも寿命を持たせようと9300Kで調整していたという慣習があり、べき論を採るのか、実質を取るのかで、なかなか難しかったのだが、しかしもうブラウン管は死語である。
これからは実質的なカラマネで、印刷業界もどんどんサイネージや動画の世界に入っていくべきである。デジタルシネマや4K、8K等と再現色域はどんどん大 きくなっていく。何時までも「sRGBだAdobe RGBだ」とばかり言っていられない。
そして、動画でもシネマの世界というか、映像とい う高尚な世界も規格化されつつあるのだ。RAWデータのようなLOGファイル(デジタルネガカラーのイメージ)で撮影して、ガンマを1にして合成して(ACCES)、異なった複数のカメラで撮影したデータを編集したり、CG映像と合成したりするのである。これを「シーンリニアワークフロー」と呼んでいるのだ。こんな世界との印刷業界との接点は、CGを使用したCF(コマーシャルフィルム)の世界が最短距離にあるといえるだろう。
この世界には映画を筆頭にハリウッド流という独自の世界が存在する。映像の世界では圧倒的な力を持つハリウッドがどのようなカラマネの哲学を持って、どのようなノウハウでやってきたのか?カラマネをかじっている印刷人だったら、最低限知っておく内容だ。
4月20日(水)の「映像制作における色管理とACESを活用したワークフロー」ではシーンリニアワークフローはもちろん、新しいデバイスの色域やデジタルサイネージを力業で色合わせをする仕方等について徹底的に説明・議論したい。
(JAGAT専務理事 郡司秀明)
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