ブランド×デザインの歯車がうまく絡み合うことで、販促物の効果を最大化するだけではなく、クライアントの製品・サービスの価値の向上にも寄与できる。
印刷業に限らず、あらゆる業界で自社の“差別化”が課題となっている。製品やサービスの機能で差をつけることが大切なことはいうまでもないが、お客様に差異をきちんと認識してもらえなければ購買には結びつかない。逆に“差異”がお客様によって識別されているとき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ。
デザイン機能の強化に取り組む印刷会社が増えつつあるが、ブランド、あるいはマーケティングを意識していないデザインは、商業デザインとしての効果は限定的だ。また、立派なマーケティング、ブランド戦略を構築しても、それを表現することができなければ効果を得ることはできない。ブランド×デザインの歯車がうまく絡み合うことで、販促物の効果を最大化するだけではなく、クライアントの製品・サービスの価値の向上にも寄与できる。
JAGATでは今回は新たにブランド×デザインがテーマの新講座「ブランド価値をつくり表現するデザイン習得講座」(講師:有限会社グレイズの小澤歩氏)を実施した。本講座では印刷会社がクライアントの製品・サービスに対してブランド構築を支援し、そのブランドをエンドユーザーへ訴求する具体的なデザイン手法について学習する。
講座で得られる効果は、以下の5つである。
1)販促物のデザインにまで一貫したブランド表現をすることでお客様の売り上げ増などに貢献
2)顧客の成果に寄与し価格競争からの脱却
3)デザイン提案の説得力が向上し受注成約率が高まる
4)デザインの方向性が示されて制作作業の効率化
5)営業や制作部門間での意思統一が図れ、組織関係性が強化
ブランドコンセプトと、それを表現するデザイン規定書を策定することで、営業、制作の共通認識、共通言語が生まれチームワークが高まり、コミュニケーションミスを防ぐことができる。また、顧客のブランディングを支援することで、より貢献度の高い仕事しているという自尊心が芽生え社員のモチベーションが高まるという効果もある。
ブランディングとデザインは点で考えるのではなく、経営戦略やマーケティング戦略と一貫して考えることが重要である。そこまで踏み込んで考えることで、末永くお客様から支持されるブランド価値を提供することが可能となる。
印刷会社がお客様の経営戦略を一緒に策定するようなケースは稀であろうが、ブランド構築のプロセスを理解しておくことは、デザイン設計においても非常に有効である。本講座では、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングといったブランド構築の基本プロセスを一通り体験することができる。
もう一つの特徴として、座学だけでなく参加者同志でチーム分けをしてワークショップを行うということがある。グループごとに仮想企業を想定し、議論しながらブランドコンセプトからブランド・デザイン規定書を作成し、プレゼンテーションまでを行った。チーム同士の白熱した議論や講師からの的確なフィードバックにより2日間と短い期間ではあったが、非常に質の高いプレゼンテーションであったのが印象的だ。
最後に、小澤氏は「ブランド構築は最初から結果が出せるほど甘くはありません。ただし、講座で学んだ構築ステップを一つひとつ積上げることで、結果が出なかったときに一からやり直すのではなく、途中のステップまで戻って修正することができます。ステップを踏むことで、どの部分で間違ったのか、どこを修正すべきなのかの検証が容易になります。粘り強くお客様のために考えて行くことで最終的には必ず素晴らしいブランディングを提供することができます」という激励の言葉で講座を締めた。