印刷業界で一般的に使用されるようになったDTP(Desktop publishing)という用語は、ページレイアウトソフト「PageMaker」の販売開始にあたり、米アルダス社ポール・ブレイナード社長が1986年に生み出した造語である。
DTP分野のマシンは、Macが数多く利用されてきた歴史がある。これは当時、先進的であった実用的WYSIWYGを実現したシステムを搭載していたからだ。WYSIWYG(ウィジウィグ、印刷業界では死語?)とは、What You See Is What You Get(見たままを得ることができる)の頭文字をとったものであり、ディスプレイに現れるものと処理内容(印刷結果)が一致する技術的表現である。今では当たり前になったWYSIWYGであるが、当時は先進的な技術であった。
DTPに求められる品質とは
印刷物製造はDTPによる生産体制に一変し、プリプレスというハードルが大幅に下がったため、プロとアマの境界もなくなってきた。しかし、DTPができるということと適した印刷用原稿を作るということは別問題だ。
現在でも印刷会社には印刷用原稿として適さない、いわゆる不具合や間違ったデータが日々入稿している。これらのデータを印刷会社でチェック、修正することは現場の生産性が悪化するだけでなく、大きなリスクも伴う(その分の費用をいただいていれば良いが…)。それらのデータで印刷し(てしまっ)た場合、最悪のケースでは、製品にならないケースもあるので注意が必要だ。
また、オペレータは、自分の作業は正しいと思う傾向があり、自ら校正してもミスは発見しづらい。コストがかけられない環境下における検査・検版は、現場におけるチェックポイントを明確にして、かつシステマチックに行わなければならない。
DTPによる効率作業
印刷会社のDTP工程は、一般の製造業とは異なり、日々異なる(お客様の希望する)製品を作り続ける必要があるので、適切で柔軟な判断力が不可欠である。
したがって、DTP工程は正確な作業はもちろん、常に機能の組み合わせや手順を考えた効率化が必要である。さらに、前述のようにクライアント側で制作したDTPデータが印刷会社に入稿するケースも増加したため、それを修正するケースにも対応が必要だ。
制作現場では、DTPアプリケーションの基本や機能を知らないとソフトの連携がうまくいかなかったり、遠回りの作業やミスの原因になることが多い。要するに、正しい知識、正しい方法によって最短ルートでデータを作り上げることがカギになる。正しい方法で作業するには、常に機能の組み合わせや手順を頭に描いて実践することが重要である。
なぜならDTP作業は、10人いれば10通りの方法になる。いろいろなルート、方法が存在するから変化があり、楽しく奥深いものである。しかし、遠回りしてよいのは素人であり、プロはDTPアプリケーションの機能、特性を生かしつつ、正確な作業を短時間に行うという意識が必要である。
(西部支社長 大沢 昭博)
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