5月31日から6月10日に開かれたdrupa2016の報告会が各地・各所で行われている。報告の中では往時の勢いはないという印刷ビジネスの苦境というか環境の変化に言及する声も聞こえてくる。それでもdrupaが近未来の印刷技術関連の動向や製品トレンドを知るうえで、最も期待と注目度が高い世界最大の印刷メディア産業の展示会としての位置付けは不変だ。
しかしながら80年代、90年代までのように技術革新に基づいた画期的な新製品が登場し、次のメシのタネを探すことができた状況は変わったようだ。
とはいえ、もともとdrupaは商談の場であり、各種の技術や製品を見てビジネスを創り出せるかは来場者の意識・姿勢次第ともいえるのかもしれない。特にdrupa2016では各社からB1サイズ対応のインクジェット印刷機が出展されたわけだが、今後は生産機としてどのように印刷ビジネスで活用されていくのか注目したい。
また、加飾や表面加工などの展示も賑わったようで、いかに印刷物の価値を高めていくかについてもさまざまな提案がなされているということだろう。JAGATinfo7月号では、drupa2016の模様を速報ということで報告している。次号8月号では第2弾レポートとしてdrupa2016の注目すべき部分、それらがこれからの印刷ビジネスで意味をすることを考察し報告する予定である。
drupa2016報告を聞いて感じるのは、単にすぐれた機器を導入する商談の場だけではなく、それらを活用して印刷物が顧客の納得できる価値を提供して選ばれるような仕掛けづくりや、印刷物が必要になる理論的な裏付けをしっかりと顧客に説明できるソリューションを見つけることができる展示会の必要性である。しかしそれは、もはや印刷関連機器だけの展示会では難しいのかもしれない。その意味でpageは新たな方向性を模索しており、page2017に向けていろいろと企画中である。
その一方で、いかにビジネスを広げるかということでは、先日の取材で、印刷会社から独立してクロスメディアビジネス事業を展開する会社を設立したJAGATクロスメディアエキスパート認証資格の取得者から印象的な話を聞いた。
販促企画の提案で動画やウェブ、SNSなどのメディア制作をしていると、印刷物の活用が必要になるタイミングやシーンが出てくるという。そのときに、「なぜ、その場面で印刷物が有効か」を感覚的ではなく、しっかりと論理的に説明できると顧客は印刷物も活用するし、実際に効果を上げることができるという。もともと印刷メディア制作を行っていたこともあるが、各メディアの特長をよく知ることで最適なメディア連携の提案を行っているわけである。(ちなみに論理的思考の重要性を認識し、勉強するのにクロスメディアエキスパート資格の取得がきっかけになったという)
逆の見方をすると、今の時代に販促をする場合に印刷物だけを制作しておしまいということはなくて、その周りにはさまざまメディア制作があるわけだ。それらをしっかりと確保できればビジネスは広がるということである。だからこそ印刷会社にもマーケティングの実力が必要になるし、クロスメディアビジネスが有効となるわけである。
(JAGAT info編集担当 小野寺仁志)