-ブランディング×デザイン力で印刷会社のソリューション力を高める【第10回】
ブランド・イメージをデザインで表現する上で、広告媒体に掲載する写真の選定は重要である。ユーザーの購買意欲を喚起するための写真ビジュアルの表現方法について考える。
※本稿では顧客の定義を以下の通りで記している。
・印刷会社の顧客(以下、顧客)
・印刷会社の顧客の顧客(以下、ユーザー)
●ブランド訴求に欠かせない写真やイラスト
印刷会社が顧客へブランディングの支援を行う際、顧客の商品・サービスのブランド・イメージを、ユーザーへ適確に訴求することが大きなミッションとなる。そして、適確に表現する際に重要になるのが写真やイラストだ。広告・販促物のメイン(アイキャッチ)に使われ、ブランドの価値がどのようなものかを瞬時に伝えることができるため、広告・販促物の成果に大きく影響する。
戦略的に写真やイラストを選定する方法はいくつもあるが、本編では広告・販促物を通して、商品・サービスのブランド・イメージをユーザーに的確に伝えることができる選定方法を中心に紹介する。
●商品、サービスの特徴を考慮した写真やイラストの選定方法
最初に顧客の商品・サービスの特徴について考えるが、以下の4つのマトリクスに分けて考えていく。「形のある」ものか、「形のない」ものなのか。そして、ユーザーがその商品・サービス(広告・販促物等を含める)に触れたときに、内容をすぐに「理解できる」のか、それとも「理解できないのか」で分ける。
顧客の商品・サービスは各象限のどこに当てはまるかによって、広告・販促物のメインに使う写真やイラストを選定していく。まずは、Aの象限は、例えば保険や金融商品、美容院、病院などが考えられる。これらは利用後のイメージが見えにくく、ユーザーの不安が大きいものである。利用後の結果がイメージできるものや、喜びを表した写真やイラストを選定することで、商品・サービスの価値をユーザーに伝えることができる。
Bの象限に当てはまるものは目に見える商品・サービスで、どのようなものか誰でもわかりやすいものである。競合が多く商品・サービスも同質化したものが多いので、同業他社との違いが明確にわかる写真やイラストにすることで、価値を伝えることができる。飲食店であれば「美味しそう」と感じられるシズル感のある写真を選ぶことで違いを表すことができる。
Cの象限は、商品・サービスのイメージが全くわからないもの、今までにない新たなカテゴリーの商品・サービスを開発した場合がそれにあたる。この場合は、どのような商品・サービスかを先に説明するのではなく、それを利用すべき理由や利用すべき対象になるターゲットをユーザーに認識させるような表現の写真やイラストがよいであろう。例えば、日々忙しい会社員の業務を効率化する商品・サービスなどでは、忙しく働いている会社員の写真等をメインで表現する。対象になるユーザーは「自身に関係あるもの」と感じることになり、それによって商品・サービスの価値を伝えることができるのである。
Dの象限は、形のあるものとはいえ使用方法が不明なもので、例えば美容・健康用品などが当てはまる。この場合は、利用方法や効果を広告・販促物の先が読まれやすくなり、価値を伝えることができる。実際の利用の状況や利用するまでの不安を低減する写真やイラストを使う。
ブランディングは、ユーザーが商品・サービスに「どのような認識をしているのか」「どのような感情を持っているのか」など、顧客視点に基づいて考える。ユーザーが広告・販促物に触れた際に、まず視点が行くアイキャッチの写真やイラストが顧客視点で考えられているものは、商品・サービスのブランド・イメージを表現されたものとなり、より成果を期待できるのである。
小澤 歩(おざわあゆむ)
有限会社グレイズ代表取締役 http://ozawaayumu.com/
(財)ブランド・マネージャー認定協会マスタートレーナー http://www.brand-mgr.org/
目次 | ||
第1回 | 印刷会社に求められる顧客ビジネス支援のブランディング [2015/10/23] | |
第2回 | 印刷会社がクライアントに提供すべきもの [2015/11/27] |
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第3回 | 印刷会社が取り組むべきブランド戦略構築の流れ [2015/12/01] |
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第4回 | 活動の軸になるブランド・アイデンティティとは [2016/01/05] |
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第5回 | 顧客の心の中で自社を占めるポジショニング [2016/02/05] |
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第6回 | 印刷会社ができるクライアントのブランド価値の表現 [2016/03/08] |
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第7回 | ブランドの価値は世界観とトーン&マナーでつくる [2016/03/11] |
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第8回 | デザインを統一するトーン&マナーのつくり方 [2016/04/8] |
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第9回 | ブランド・イメージをユーザーに届けるためのデザイン表現方法とは? [2016/05/12] |
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第10回 | ユーザーの購買意欲を喚起する写真、イラストの選定方法 [2016/07/15] |
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第11回 | ユーザーの購買行動を促す広告・販促物に必要な視点とは [2016/08/19] |