スマホの画面で情報を得ることが日常生活の一部となっている中、お客様の情報発信の仕方や予算配分も大きく変わりつつある。こうした環境変化に印刷業界はどのように対応すべきだろうか。
pageセミナーで「これならできる!儲かる!デジタルコンテンツ活用を体感する」で講師を務めたベンティクアトロの石井千春氏は、「今の時代に印刷の請負製造だけでビジネスをするのは、援軍が来る当てもなく籠城戦をするようなものだ」という。コストを切り詰めて耐え忍んでいても、右肩上がりで市場が伸びた頃の状況に戻ることはない。
もちろん例外もあり、例えば請負製造に特化するという戦略もあるが、それには熾烈な価格競争を勝ち抜く覚悟と裏付けが必要となる。この選択肢を選べる企業の数は限られる。
では、城から打って出てどのように戦えばよいのだろうか?
Adobe Muse の活用
Adobe Muse はWeb コンテンツ作成ツールで、Adobe のDTP ツールと親和性が高い。そのためDTP制作スキルがあれば、ノーコーディングでWeb サイトが構築できるのが大きな特徴である。Creative cloudの契約をしていれば、追加投資することなく利用できる点も魅力である。
一般的なWeb サイトの構築では競合環境は厳しい。お客様との関係性やお客様のコンテンツをお預かりしているという印刷会社の強みを生かすことを考えると、販促物やデジタルサイネージのコンテンツ作成が向いている。
また、ビジネスにおいてお客様からの引き合いがあってから対応するのではなく、こちらから先に提案することが非常に重要である。そして実物に近いサンプルを作成して提案する。完成度の高いサンプルを比較的容易に作成できる点もデジタルコンテンツの優位な点である。
石井氏は、かつてのDTP の仕事は最先端のMac を使ってクリエイティブなことができる憧れの仕事だったという。ところが今は、「指示されたことをその通りに再現する」という文字通りのオペレーターとなっている。さらに納期に追われ、効率に追われ前向きさが失われている。元気のないDTP オペレーターにクリエイティブな仕事をする喜びを取り戻したいというのが石井氏のもう一つの想いだ。
そして、「どこにもできないモノを作る」ためには人材、情報デザインのエキスパートが必要となる。求められるのは、メディアを通して発信する情報の効果を最大化するための施策を考えること、ブランドイメージを統一化、向上させるための情報戦略を内包したさまざまなデザインフォーマットを開発しマニュアル化すること(これにより誰でも再現でき大量のコンテンツ作成や迅速な更新を低コストで行うことが可能となる)である。
言葉にすると非常に抽象的で分かりづらくて恐縮なのだが、中小の印刷業にとっても新たなフロンティアとなり得る領域だと考えており、改めて紹介する機会を設けたい。
(CS 部 花房 賢/全文は『JAGAT info』2016年3月号に掲載)
関連イベント
2016年8月4日(木)15:00-18:00(受付開始:14:30より)+情報交換会★飲物付き
印刷会社の既存資産を活かしたWebビジネスの提案を行うために、AdobeMuseのエキスパートが実演をまじえ、より具体的に解説する。