*インクジェット機がますます大型化し、ますます電力を消費する中で、あえてコンパクト・省電力をコンセプトとした理想科学工業のインクジェットフルカラー連帳機「RISO T1」は、drupa2016の中でも注目を集めていた。
省エネの鍵はインク
drupa2016で明らかになったデジタル印刷機の技術的課題の1つは、筐体の大きさと消費電力の大きさである。あるB1両面デジタル印刷機は全長16.1m、幅6.7m、重量は22tに達する。これだけ大きな筐体を動かす動力、そしてなんといってもインクを熱で乾燥させ、同時にユニットを冷やすエネルギーは膨大である。
このような大型機が軒並み展示される中で、コンパクトなインクジェット機「RISO T1」はかえって異彩を放っていた。印刷サイズは520㎜幅であり、B1機と単純に比較はできないのではあるが、全長4.08m、幅1.8mのコンパクトな筐体ながら、ロール給紙で両面印刷が可能である。
なぜ巨大化するインクジェット機群のなかで、理想科学工業がコンパクトな筐体を可能にしたのか。その秘密は実はインクにある。「クイック・ドライ・インク」と呼ばれる同社が開発したインクで、顔料の成分は紙の表面に残し素早く定着しつつ、その他の成分は紙に素早く浸透する。そのため乾燥装置が省け、構造もシンプルで筐体もコンパクトになる。結果、省電力が可能になり、競合他社の61.7~83.4%の電力減が可能になる。
ただし、留意すべき点もある。まずこの「RISO T1」は解像度600×600dpiで、データプリントを想定しており、DMなどの商業印刷は想定していない。生産性も毎分42mである。解像度を上げることも、生産性を上げることもできるが、「品質・価格・生産性のなにを追求し、なにをはずすのか、コンセプトにこだわった」という。「Unique Possibilities」をテーマに掲げ、ニッチでユニークな製品で独自のポジショニングを取る理想科学工業ならではのコンセプトモデルである。
「RISO T1」自体はデータプリント機であるが、商業印刷においても、自社の仕事に見合った小回りの利くインクジェット機のニーズは、実は大きいのではないだろうか。
後加工・表面処理にも注目
drupa2016ではロール給紙デジタル印刷機の後加工メーカー・TECNAUや、デジタルでの透明厚盛や箔押の加飾システム「Scodix」も大きな注目を集めていた。これらの後加工システムの技術的革新点も、これから研究会などを通じて追究していきたい。
関連イベント
■drupa2016の注目製品~コンパクトIJ機、フィニッシング、表面加工~
2016年8月29日(月)14:00-17:00(受付開始:14:30より)
連帳デジタル印刷機のインラインフィニッシングで世界的なシェアを持つTECNAU、アナログでは不可能な微細な透明厚盛や箔押しが可能なデジタル加飾機SCODIX、コンパクト・省電力を可能にした理想科学工業のIJ機「RISO T1」について研究する。