【第15期:美容室】クロスメディアエキスパート認証 第2部試験
状況設定について
あなたは、首都圏にある中堅総合印刷会社のX社に勤務するクロスメディアエキスパートである。X社は、商業印刷物やDVD-ROMの制作、Webサイトの構築・運用などのサービスを顧客企業に提供している。X社にはデザイン専門の系列子会社があり、グループ総従業員数は100名である。
A社提案プロジェクトについて
美容室を運営するA社は、X社が過去に取引を行った顧客企業である。X社は、同社Webサイトの一部を手がけた実績もある。営業担当者より、「A社は、顧客との新しいコミュニケーション戦略の検討をしている。」との報告があった。
X社は、営業部門や企画部門、制作部門に所属する数名で、A社提案プロジェクトを立ち上げた。
クロスメディアエキスパートであるあなたは、本プロジェクトのリーダーに任命された。 X社は、本プロジェクトにて提案書を作成し、20××年○月○日にA社へ提出する予定である。
面談ヒアリングについて
A社について調査をすすめていった結果、X社の競合企業がインターネットやモバイル端末を活用した提案を行う準備をしているとの情報が入った。X社は、営業担当者が中心となり、社長と販促担当者に面談ヒアリング(※面談ヒアリング報告書参照)を実施した。A社は、コミュニケーション戦略を立案するにあたり、社外からの優れた提案を取り入れ、実施を検討する方針である。
A社面談ヒアリング報告書
概要:A社からの提案依頼に伴う、ヒアリング調査
日時:20××年○月○日 10時~12時
対応者:山野社長、川野専務取締役
1.提案に向けて
A社は美容サービス業を営み、神奈川県内の郊外を中心に展開している。事業所は、本店の他に支店を4店舗、運営している。
創業当時から、髪の健康を重視する姿勢が主婦層の顧客から支持され、業績は順調に推移していた。しかしながら創業10年を過ぎた頃、店舗の近隣に低価格の美容室が進出してきた。
その頃から、主要顧客層が他店に流出する事象が多くなり、業績が悪化する傾向となった。
A社は業績悪化を受け、サービス内容の見直しや様々な取り組みを行い、顧客に主要店舗である本店と支店を相互に利用してもらう活動を実施している。
A社と同様の理念を持つ酵母温泉を経営する事業者と連携し、「健康と美容」をコンセプトとした各店舗を「地域住民の交流の場」として位置づけ、他社と差別化を図るアプローチ方法を検討している。
A社は顧客とのコミュニケーション手法を確立し、それに伴うコンテンツやメディア展開案を求めており、顧客との関係性を重視したプロモーションの実現を模索している。
2.施策の運営と実施効果測定
- 週単位でメディア展開の実績を確認したい
- 可能な範囲でメディア利用者のレスポンスを管理したい
- A社の担当者は、他業務と兼任で2名を予定
3.施策の実施期間
- 4月1日に施策開始、来年3月31日までを第1フェーズとして予定している
- 11月から1月下旬までが運営業務のピークを迎えるため、コミュニケーション施策は、業務のピークを考慮したものとしたい
4.創業時について
- 山野社長が美容業界に入った動機は「人を美しくしながら、自分も綺麗にすることができる」であった
- 美容学校卒業後に、大手美容室で8年間勤務した
- 髪や顔を表面的に美しくするだけではなく、心も体も健康であることで、本当の美しさが実現できると思い始めていた
- 理想を実現するために独立した
5.業績の変化について
- 郊外にある私鉄の駅前商店街に本店を開業した
- 居住者の入れ替わりは少なく、人口は安定していた
- 競合する事業者もなく、業績は安定していた
- 価格設定は高額であったが、主要顧客となる40~50代の主婦層に「口コミ」で受け入れられた
- 健康に配慮したマッサージやトリートメントなどの薬剤が評判であった
- 薬剤は、健康に配慮する化粧品メーカーから仕入れていた
- マッサージやパーマの施術に関する技術や、薬剤の髪への浸透方法は、独特のノウハウであった
- 開業10年後には、住宅地が開発され、私鉄と連絡する地下鉄が開通した
- 駅前商店街を通る通勤、通学客が増加した
- 低価格設定の美容室を展開するB社が駅前商店街の近隣に進出してきた
- B社は有名人をカットモデルとして広告塔にすることで、集客を図っていた
- 華やかさとカジュアルさを訴求することで新規居住者である若い女性を中心に、B社は顧客を獲得した
- B社が進出により、A社の新規顧客の来店数が減少してきた
- 新規顧客を獲得するため、A社も低価格の支店を地下鉄の駅前に開業した
- 「健康と美容を手ごろな価格で」をテーマとしてチラシを中心に訴求した
- 若い女性を中心とした新規顧客は、短期的には増加した
- A社の主要顧客である40~50代の主婦層は、他店に流出することが多くなった
- 来店頻度や客単価が低下したことで、利益率が低くなり、業績が悪化した
- A社はこれを機に改革に乗り出すことになる
- 現在では、5店舗を郊外に展開している
6.サービスについて
- 営業時間は、10時から21時迄である
- 健康と環境を重視したサービスを貫いている
- 一人一人に適したサービスと商品を提供している
- 本店は完全予約制で高額である
- 個室での美容相談やカウンセリングなどが中心である
- カウンセリングは、特殊な顔面洗浄や、縮れ毛修正などといった難易度の高い技術に関する内容である
- カウンセリンリングに対する顧客の評価は高い
- 本店は支店を利用してもらうためのアンテナショップ的な位置付けでもある
- 支店では、カットやパーマ、スタイリングなどの施術サービスを提供している
- 支店で行う施術サービスは、特定のスタイリスト(従業員)に集中している
- 売上の8%程度を占めるケア商品の購入割合は本店の利用顧客が80%である
- 売上原価の60%は、スタイリストの人件費である
7.健康への取り組みについて
- 髪の健康を配慮したヘッドスパ(頭皮洗浄)に力を入れている
- 頭皮を清潔な状態することで健康的な美しさを実現できる
- 頭皮洗浄のための高額なヘマチン(髪の補修成分のこと)を配合したシャンプーとトリートメントを安価に提供している
- 「顔のマッサージサービス」は、血行とリンパの流れに効果があり、老廃物を出して顔のむくみを軽減する
- 「システムパーマ」は、髪の栄養を補いながら行うため、髪の損傷を抑制できる
- 常連顧客以外は、健康への取り組みに関する認知度が低い
8.環境問題への取り組みについて
- 全国に約22万ある美容室は、パーマやカラー剤などの化学物質を、原液に近い状態で川や海に排水している
- その結果、地球環境や人体の健康に影響を及ぼしている
- 社長は、化学物質を排水することに罪悪感を持っていた
- 天然水を使ったシステムにより、排水する薬剤の量を半減させている
- さらに「薬剤1/4化プロジェクト」立ち上げ、取り組みを行っている
- パーマ液をトリートメントと水に分解する環境を配慮したオゾン発生器を使用している
- 使用するドライヤーは、一般的にマイナスイオンが多い滝つぼでの発生量より100倍も多いのが特徴である
- Webサイトで環境へ対する取り組みについて情報を発信しているが、アクセス数がほとんどない
9.サービス向上へ向けた取り組みについて
- 従業員の8割が下記2つの資格を持っている
- 「ヘアケアマイスター」は、毛髪診断の的確な助言するための資格である
- 「カラーアナリスト」は、最良の色や似合う色を提案するための資格である
- 業界団体主催の施術や接客技術を競い合う全国レベルでのコンテストが定期的にある
- A社はコンテストで団体の部と、個人の部で受賞している
- トリートメントをはじめ、髪に薬剤が定着するには温度、湿度、水分量、薬をつける順番などが重要である
- プロセスや条件を重視した独特のノウハウがある
- 施術後は顧客自身でもヘアセットが簡単にできる効果がある
- 顧客向けの勉強会では、薬剤の成分に関する情報を中心に説明している
- 常連顧客以外は、サービス向上に関する取り組みの認知度が低い
10.販促活動について
- 主要顧客は、40~60代の女性である
- 他社と比較しても価格は高めである
- Webサイトでは、会社案内、サービスメニュー、A社の特徴を発信している
- アンケートを定期的に行い、以下のような意見がある
- スタイリストの話題が豊富で会話が楽しい
- カラーリングが優れている
- 顧客の意見を商品やサービスに反映する方針を明示している
- 顧客の価値観の差が、来店頻度に大きな影響を与えている
11.市場動向について
- 美容の市場規模は、近年縮小傾向にある
- 今後も価格競争が激化する予測がある
- 消費者は、技術だけでなく、安全や安心、癒しなどを求めている
- 低価格店は、短時間で施術し、効率性を重視している
- 高価格店は、ビューティープラン提案をはじめとした、付加価値の提供を重視している
- その結果、高価格店と低価格店の2極化が生じている
12.競合店舗について
- 大手B社の低価格美容室がある
- 全国で、30店舗を展開している
- 顧客は、20~30代が75%を占めている
- 大量メール配信システムを導入し、メールマガジンを発行している
- 大手化粧品メーカーのヘアケア商品やスキンケア商品を販売している
- C社は、ファッション性や優雅さを重視した美容室がある
- 顧客は、中高所得者が大半を占めている
- 優雅なひと時を過ごせるように、完全予約制である
13.今後の展開について
- 価格競争回避のため、新たな取り組みを検討している
- A社の健康と美容の取り組みを顧客に訴求することで、新規顧客を獲得したい
- 商店街の一角にある「健康と美容」を追求した酵母温泉と連携し、「地域住民の交流の場」として活用できるよう、関係者との調整を行っている
A株式会社の概要
法人名 A 株式会社
創業 平成4年(1992年)
設立 平成14年(2002年)
従業員 70名(パート、アルバイト含む)
資本金 100百万円
売上 980百万円(20×〇年)
所在地 本店 神奈川県川崎市 支店 川崎、町田、相模原
役員 代表取締役 山野 美和子 専務取締役 川野 健
事業内容 美容に関する施術サービス 美容商品の販売
沿革
1992年 1号店(本店)を開業(客席数は5席)
1995年 化粧品メーカーと業務提携、商品の共同開発を開始
1997年 1号店を増改築(客席数を10席に増加)
2002年 2号店を新規オープン
2004年 3号店を新規オープン
2006年 4号店を新規オープン
2008年 5号店を新規オープン
A社経営理念
私たちは、常にお客様へ対する感謝と、ともに成長することを第一と考え、日頃から健康と美を追求し、お客様に豊かな生活を提供します。
A社社長プロフィール
山野 美和子(やまの みわこ)
19●●年●●美容学校卒業後、大手美容室に入社、スタイリストとして様々な施術技術を経験する。退職後、A社を創業。趣味は、バードウォッチングと読書。
A社損益計算書
2010年度 | 2011年度 | |
売上高 売上原価 |
1,000,000 865,000 |
980,000 833,000 |
売上総利益 | 135,000 | 147,000 |
販売費・一般管理費 | 115,000 | 107,800 |
営業利益 | 20,000 | 39,200 |
営業外収入 営業外費用 |
1,000 3,000 |
1,000 4,000 |
経常利益 | 18,000 | 36,200 |
設問
問1 A社の顧客コミュニケーションにおける課題を3つ記述しなさい。
・課題1:
・課題2:
・課題3:
問2 問1の課題解決に向けて、A社へ提出する提案書に記載する施策について記述しなさい。
・施策の想定ターゲット顧客
・コンテンツやコミュニケーション施策
・施策で使用するメディアと選定理由
問3 A社へ提出する提案書のタイトル、提案の主旨(特徴)を記述しなさい。
・提案書のタイトル
・提案の主旨(特徴)
問4 A社へ提出する提案書をクロスメディアエキスパートとして記述しなさい。
・【記述形式:A4・横書き・3枚】