【クロスメディアキーワード】インターネットメディアとネットワーク社会

掲載日:2016年11月11日
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インターネットは誰もが情報を受発信できる開かれたメディアだが、その反面、情報の「信頼性」「安全性」などについて問題が存在する。

Wiki と進歩的性善説

インターネットにおける「Web」の爆発的な発展は、「分散性」と「匿名性」に基づく受発信の容易さによるところが大きいと考えられる。この「分散性」により、さまざまな「コンテンツ」が世界中で受発信されてきたばかりでなく、一つの「コンテンツ」を共同制作できる環境としての「仕組み」も実現している。
「Wiki(ウィキ)」とは、Web ブラウザーから容易にWeb ページの制作が行える「CMS(Contents Management System)」の一つである。履歴管理や復元などの機能を搭載することで、誤りや悪意を持った編集による不測の損害を防ぎ、自由度の高い共同制作環境として普及している。
「Wiki」を利用しインターネット上で「百科事典」の共同編集を進める「Wikipedia」は、英語版では2015年8 月時点で500 万近い項目数に達している。多くの人々が参加し、修正を含む「編集」を繰り返すことで、正確性が向上するといった共同編集手法は、インターネット上における「集団の知恵」として注目される。
しかし、「匿名性」と「分散性」に支えられた「Wiki」による「百科事典」は、編集責任が明記されている「伝統的な百科事典」と比べ、「信頼性」の面では同様に扱うことができない。このように「信頼性」が高いと言えない情報は、利用者がその内容を判断し、注意深く利用しなければならない。
インターネットの活用による「いつでも、どこでも」情報の受発信ができる容易性は、コンテンツ運用において非常に有益な仕組みとなり、「Wikipedia」のような「百科事典」や「ソーシャルメディア」などの情報を共有する「Web サイト」の利用者が増加する理由の一つとなる。しかし、分散的な共同編集手法にも問題は存在する。それは、「更新される情報が次第に良くなるとは限らないこと」や、「制作者の意見が分かれると内容が確定的なものとならない」などが挙げられる。
また、一貫したコンテンツでなくなることで、管理者の不在につながり、「信頼性」の欠如につながる。ただし、一時的に問題のあるコンテンツが掲載されても、複数の制作者や利用者により、内容は緩やかには監視されている。コンテンツの内容は、複数の制作者や利用者からの指摘により是正される場合があり、さらに利用者の多い有益なコンテンツについては、専門的な知識を持つ人物の関与も期待できる。したがって、インターネット上の分散的な共同編集により制作されたコンテンツは、長期的に考えると「信頼性」の向上が期待できる情報源になるという、善意の支配が勝る「性善説」が語られる。

メディアの複合利用

ペーパーメディアにより発信された情報の概要や低解像度の画像をインターネット上に展開し、ペーパーメディアの利用を促す手法は、過去に多く試みられてきた。しかしながら、ペーパーメディアに利用者が必要としている情報が掲載されているか正確に判断することが難しいため、実際には利用に結び付かないことも多く、その効果検証も実施されなかった。現在は、インターネットメディアとペーパーメディアを横断的に利用する方法は、一般的となった。大手新聞社ではインターネットメディアにより購読者に対し、地方版や限定コンテンツの提供、特別チケットの購入権付与など、総合的な「付加価値」を提供している。また、非購読者にも楽しめるコンテンツの一部を用意し、さらに続きを閲覧しようとすると購読者以外は閲覧できないといった手法が採用されている。非購読者に対し「購読者になると付加価値も利用できる」と訴求することで、購読意識が高まることを期待できる。

QR コードの活用

ペーパーメディアからスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末へ誘導する目的の一つとして、「利用者の特定」を挙げることができる。
「URL」を入力する煩わしさを解消するため、「QRコード」の活用が一般的な手法となっている。「QRコード」は二次元コードの一種で、リーダーが読み取りやすいコードとして開発され、1994 年に発表された。それまでのバーコードは約20 桁程度の情報量だったが、「QR コード」の登場によりバーコードの約数十〜数百倍といった情報量の取り扱いが可能になった。「数字」「英字」「漢字」「ひらがな」「カタカナ」「記号」「バイナリー」「制御コード」など、さまざまなデータの取り扱いが可能であり、「数字」で最大7000 文字まで表現することができる。
「QR コード」の活用は、会員登録を目的とした利用者のメールアドレス取得のための「空メール」送信に応用することができる。Web サイトの閲覧者が会員であるか判断するために、会員のみが入手できるものに「QR コード」を印刷し、その「QR コード」を定期的に読み込ませる手法なども考えられる。
「パソコン」用Web ページの場合は、ユーザー名やメールアドレスなどを「QR コード」とし、リーダーで読み込むことで関連付けする方法もある。「QR コード」と記載する際には、「QR コードは(株)デンソーウェーブの登録商標です」と併せて記載する必要があるが、「QR コード」の画像のみを使用する場合には記載する必要がない。また、デンソーウェーブは「QR コード」画像の使用に関し、「一切請求しない」ことを公にしている。「QR コード」の普及は、複数ある二次元コードの中でも、一切請求しない」ことにより実現したと考えられている。

社会環境とメディア

社会環境の少子高齢化やグローバル化などにより、利用者ごとのメディア活用能力の差があるため、それぞれのメディア特性を生かし、「アクセシビリティー」や「ユーザービリティー」「ユニバーサルデザイン」などを採用した情報発信を心掛けることが望まれる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年9月号より転載