【クロスメディアキーワード】電子クーポン

掲載日:2016年11月14日
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「電子クーポン」とは、主にインターネット上で配布される「割引券」や「無料券」などの「クーポン」を指す。「電子クーポン」自体を印刷する方式や「スマホ(スマートフォン)」や「ケータイ(フィーチャーフォン)」などのモバイル端末を店頭で提示する方式などがある。現在、「電子クーポン」を発行する事業者と利用する生活者をつなぐさまざまなシステムが提供されている。

さまざまな電子クーポン

「メールマガジン」と連動した「電子クーポン」は、モバイル端末を活用したプロモーションで多く使用されている。
モバイル端末を利用した生活者が対象となるため、「利用履歴」の活用が見込めることから、マーケティング上でも有用なサービスであるとされる。また、「IC(Integrated Circuit)チップ」対応のモバイル端末を利用したソリューションやプロモーションも一般化している。施設や店舗などに設置された「リーダー/ライター」からデータを受信し、モバイル端末上の記憶メディアに保存する。モバイル端末には専用のアプリケーションが搭載されており、保存されたデータによる情報をリスト化し、表示や再生をすることができる。モバイル端末は受信したデータに含まれる「URL(Uniform Resource Locator)」を参照することでインターネットに接続し、「電子クーポン」や「電子チラシ」などのコンテンツを取得して表示する。
このような手法は典型的な「クロスメディア」であり、旧来の生活者とのコミュニケーション手法であるペーパーメディアの「DM(Direct Mail)」に対する代替や、補完が可能なサービスとして展開が広がっている。主な「電子クーポン」利用の「トリガー(きっかけ)」は、メールマガジンの場合がある。商品の認知度向上に向けたキャンペーンや、既存顧客のリピーター化を考慮した施策に利用されることがある。利用者は、モバイル端末向けの商品を販売する事業者のWeb サイトのほか、クーポン情報サイトやフリーペーパー、フリーマガジンなど、さまざまメディアから「電子クーポン」に関する情報を取得している。
「電子クーポン」はファストフードを提供する事業者で多く利用され、非常に短い接客時間でも取り扱うことができ、注文を受ける時間が短縮できると同時に正確性も高まるというメリットがある。

電子クーポンの問題点

移動体通信事業者による「電子クーポン」は、それぞれの仕様が異なるため、すべての生活者を対象とした互換性の高いサービス提供は困難である。特に多くの利用者を見込むことができる「スマホ」や「ケータイ」では、Web サーバーの負荷を減らすために、1 日当たりのデータのトラフィック総量やファイルサイズの制限をそれぞれ設けていることがある。したがってパソコン用とは異なり、画像データは数キロバイト程度にすることが望まれる。さらに「電子クーポン」の利用者の中には、毎週配信されるような電子メールによるプロモーションを歓迎する層と、必要なときにだけ「電子クーポン」を取得したいと考える一方的なプロモーションを歓迎しない層がある。

FeliCa

「FeliCa」は、ソニー開発した非接触IC カード技術方式である。「FeliCa チップ」を活用した「電子クーポン」サービスの代表例としては、NTT ドコモが提供する「スマホ」や「ケータイ」向けのクーポンサービスである「トルカ」がある。「FeliCa チップ」により実現される「おサイフケータイ」を活用することで、さまざまな利点をもたらしている。
生活者にとっては「アプリのインストールが不要」「メール添付や赤外線により、他の対応する端末へ容易に転送できる」などの利点があり、事業者にとっては「専用アプリの提供が不要」「データ作成が容易」「リーダー/ライターを安価に導入できる」などの利点がある。「トルカ」を「リーダー/ライター」から読み取る際には、データを「FeliCa チップ」に送信して端末を動作させる機能を利用し、「FeliCa チップ」「モバイル端末」「リーダー/ライター」の三者間通信機能を使用する。この通信方法では、「移動体通信網」や「無線LAN(Local Area Network)」による「パケット通信」を使用しないため、「リーダー/ライター」から送信される「トルカ」を受信する際の通信料は発生しない。

電子クーポンとモバイルアプリ

モバイル端末向けのアプリを活用することで、「割引券」や「無料券」など、さまざまな「電子クーポン」を配信することが可能である。「電子クーポン」には「公開日」や「終了日」などのタイマー設定ができる。モバイルアプリの大きな特徴である「プッシュ通知」に対応することで、ターゲットとする生活者に対し日時の詳細を設定し情報を配信することができる。

FeliCa 対応モバイルアプリ

おサイフケータイに標準搭載の「FeliCa チップ」を活用したモバイルアプリを開発し、モバイル端末を「電子クーポン」や「会員証」の代わりにできるようにした事例もある。「FeliCa チップ」へのデータ書き込み方式を工夫することで、利用者に直接影響する通信を抑える仕組みも取り入れられている。これにより何度でも「FeliCa チップ」への書き換えが可能となり、ユーザビリティーの向上にも寄与している。
利用者はアプリを立ち上げることで、いつでも最新の「電子クーポン」を受け取ることができる。「電子クーポン」を発行する事業者は、利用者の購買履歴に従い「電子クーポン」を発行することや、キャンペーンで無料の「電子クーポン」を発行するなど、柔軟な運用が可能になる。また、施設や店舗の「リーダー/ライター」と連携することで、「無料券」に代表されるベネフィットの高い「電子クーポン」に対する利用回数制限を実現しており、無用な客単価の低下を防ぐことができる。

JAGAT CS部
Jagat info 2015年10月号より転載