学生優位の採用市場のなかで、大企業と比較して認知度の低い中小企業は優秀な学生の採用に苦慮している。中小企業が厳しい採用戦線に立ち向かうには“キラリ”と光る独自性を学生に訴求する必要がある。
●2017年卒の採用市場も学生優位が続く
マイナビ大学生就職内定率調査によると、2017年卒学生の内定率は8月の時点で8割と高い水準に達している。また、2人に1人が複数の内々定を保有しているため、内々定の辞退も多く発生することが予想される。学生が就職先の企業を選択する上で重視するポイントは、「企業の経営が安定している」「福利厚生が充実している」「業界上位である」など大企業志向(安定志向)が強いため、中小企業にとってはより厳しい採用状況が続いている。
●中小企業の採用戦略にブランディング
中小企業は大企業や有名企業と比べて、採用条件や安定性では絶対に勝てないし勝つ必要もない。では、何をするべきなのか。私は採用活動にブランディング手法を取り入れるべきだと考える。
ブランディングとは「顧客の視点から発想し、ブランドに対する共感や信頼など顧客にとっての価値を高めていく手法」である。一般的には企業がマーケティング活動の一環として、差別化や独自性を高める際に用いられる。
ブランディングは採用活動においても有効である。中小企業として差別化や独自性を訴求できれば、学生から「この会社だから働いてみたい」などの共感や信頼を得ることができる。その結果、質の高い学生を採用できる可能性が高まる。
-「質の高い学生」≠「高い能力」「高学歴」
質の高い学生とは必ずしも「高い能力」「高学歴」を指さない。「企業の風土」「仕事内容」「企業の理念や想い」など自社の軸に共感できる学生だ。(その上で高い能力や高学歴であれば尚良い)いくら優秀な学生でも自社への共感がまったくなければ、結局は内々定の辞退や早期退職につながり採用は失敗に終わる。裏を返せば、採用ブランディングを通して質の高い(自社への共感)学生を採用することで、企業の中期的な成長力の向上は勿論のこと、上記のリスクを回避できるため結果的に採用コストも抑制することができる。
<採用ブランディングのメリット>
- 質の高い学生からの応募が増加
- 内々定の辞退者の減少
- 早期退職者の減少
- 採用活動の長期化を防ぐ
学生に思いを伝えるには、社長以下すべての従業員が自社について共通認識を持つ必要がある。2018年卒の採用活動を契機に、役職、部門、年齢、経験年数の垣根を越えた従業員全員で、あらためて自社について考えることで、新たな魅力を発見することから始めてはいかがだろうか。
CS部 塚本直樹