『印刷白書 2014』刊行のご挨拶

掲載日:2014年10月9日

このたび『印刷白書2014』が完成、発刊の運びとなりました。刊行のご挨拶を申し上げます。

現在の経済情勢を見ますと、政府による経済政策・金融政策の効果により長期金利は0.5% 台に、株価も 1 万6000 円台にまで回復し、昨年3 月末94 円台であった為替も108円台となりました。円安による輸出採算の改善で、大手企業を中心に業績の回復が見られました。しかし中小企業においては、景況感は低いままで推移しています。

印刷業界においても、今年春の消費税率引き上げの影響が懸念されました。3 月末までいわゆる駆け込み需要で多忙だった後、4 月、5 月はその反動といわれていましたが、夏を経ても印刷用紙やインキの出荷高は低調で需要の回復は前年並みとはいえません。印刷物は主に情報コミュニケーション系、プロモーション系、ロジスティックス系に分かれます。なかでも最も大きなシェアを占める情報コミュニケーション系の出版物やチラシなどにおいてその傾向が顕著です。

一般的には日本経済が増税前の状況に戻るには半年くらいかかると考えられていますが、印刷産業にその影響が及ぶのは、タイムラグを考慮に入れればもう少し先のことと思われます。マーケットが全般的にシュリンクしているので、今年も比較的小規模の印刷会社の倒産や廃業、M&A などが起きていますが、それは製本会社や紙の卸商でも同様です。一方で、金融緩和による円安で原材料や電力のコストが上昇しています。インターネットで全国からオーダーを受ける仕組みをもったいわゆる印刷通販会社が成長していく影響もあって、工場をもつことを諦める会社も近年では増えてきました。

このような状況の中、一般の印刷企業は、プリプレスやポストプレスといった印刷の前後の工程やアッセンブル等の「付帯サービス」の売り上げを増やす努力をしています。さらに一歩進んで、顧客のマーケティング活動に独自の差別化されたソリューションを提供するソリューションプロバイダーとなるべく努力しています。ソリューションには、紙メディア以外の提案を含むこともあります。地方の会社ではそれぞれの地域の活性化のために活動したり、大手企業ではビジネスドメインの拡大のため、豊富な人材や知識を生かして、BPO サービス、企業の業務プロセスのアウトソーシングのニーズに応えています。

デジタルメディアと紙メディアとがコンビネーションで使われるクロスメディアの現代において、印刷産業がどのように前向きな取り組みを行っているのか。『印刷白書2014』を通じて知っていただき、少しでも関係各位の活動に参考となるよう願っております。

                                               2014 年10 月
                                               公益社団法人日本印刷技術協会
                                               会長 塚田司郎

印刷白書2013