デザインは、クライアントが伝えたい情報を視覚化し、消費者に届けるための手段である。
■イメージを喚起させる色彩の力
色は文字や図版とともにデザインにおける重要な要素だが、クライアントの意図を的確に伝えるためには、見る側の共感を呼び起こしやすい色彩表現の手法を押さえておく必要がある。同じレイアウトでも色づかいによって印象が大きく変わる。
提案されたデザインやコンセプトがどれほど優れていたとしても、そこに施されている色が商品のイメージにそぐわなければ、効果を発揮することができず、クライアントの満足度にも影響するだろう。
イメージを喚起させる色づかいには、長年にわたって、さまざまな場面で蓄積されてきた共通の傾向がある。社会の慣習や伝統、あるいは個人の経験や記憶などと結びつきながら、人々の共感を呼び起こしやすい色づかいのルールが形づくられてきた。
こうしたバックグラウンドを考慮せず、感性やひらめきだけで色を扱おうとしても、なかなか期待するような効果が得られなかったりする。
■色がもつ心理効果、役割をデザインに生かす
色には、人間の感情と結びつき、一瞬で人の心をつかむ力がある。
たとえば、シャンプーのボトルデザインの配色を考えてみよう。クライアントが商品に清潔感や信頼感が伝わるイメージを求めた場合、どちらの色づかいが共感を呼ぶだろうか。
imageA imageB
大里浩二著「カラーと配色の基本BOOK」(ソシム)より
Bは、寒色系を中心にした組み合わせによって清潔感を伝え、さらに部分的に暖色系を加えることによって全体を引き締めながら、リラックス感を醸し出している。
デザインに託されたメッセージをより正確に伝えようとするならば、色彩が人間にもたらす心理的側面や役割、機能を理解し、用途に応じた使い方をすることが求められる。
色づかいのルールを熟知することによって、デザインの完成度も高まり、その視覚効果を商品イメージの構築から販促活動にいたるまで、幅広い場面で戦略的に応用することができるようになるだろう。
■関連情報
すぐに実践できる配色ルールの基本
講師:大里浩二氏
12月9日(金)開催
CS部 原 淳子